2024年 4月 26日 (金)

「水中考古学」なぜ日本での研究が進まないのか 学者が語る「意義」と「課題」

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なぜ、日本の研究が進まないのか

   前述のように、水中の遺跡も陸上同様に考古学の史料があふれていて、佐々木さんら学者にとっては当たり前のように研究の対象だ。その上で日本にとって水中遺跡の研究が必要なのは、遺跡が多くまた島国ゆえ、海を渡っての交流で社会が形成されてきた歴史があるだめだ。

「日本文化は常に外からの影響を受けて発達してきました。稲作、文字、宗教、社会のシステム等、生活のあらゆる部分で大陸の影響を受けています。その文化が伝わったシステムが海運・船です。2国間の交易を見たとき、陸の遺跡は、生産地と消費地でしかありません。交易を木に例えると、陸の遺跡は枝や葉の一部、沈没船は木の幹です。現在の日本の研究では、枝葉のみで木の全体像をつかもうとしています。また、水中遺跡は、有機物の保存に適しています。当時の状態をそのまま見ることが出来るほどにモノが残っていることがあります」(佐々木さん)

   しかし、ツイッターで佐々木さんが訴えた通り、日本の状況は恵まれているとは言いがたい。なぜ日本で他国に比べて研究が進まないのか、佐々木さんは「難しい質問」としつつ、

「日本では、確実に成果の出る研究、先例となる調査事例がないと、受け入れられないようです(それ自体は決して悪いことではありませんが)。新しいことに挑戦することに対して消極的に見えます。また、マニュアル・ガイドラインがないと手を出したがらないようです」
「一番大きな要因は、多くの人が水中遺跡の存在を知らない、また、触れる機会がないことです。日本で暮らしていると、あまり世界を見ることがないと思います。そのため、情報が入ってきません。考古学・埋蔵文化財行政も、国内で完結していますし、外国から日本へ調査に来る学者も多くありません」

と考える。水中遺跡というと水没した都市のような、ロマンある巨大遺跡のイメージを持たれるが、ほとんどの遺跡は小規模で海洋開発に先立って発見・調査される。しかし水中でも遺跡は不変ではなく、「失われたものは二度と戻ってこない」(佐々木さん)ものだ。

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