2020年 4月 3日 (金)

岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち 一般教書を引き裂いたペロシへの「視線」

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   2020年2月4日夜、トランプ大統領が米議会で一般教書演説を終え、大きな拍手が沸き起こった。トランプ氏の後ろに立って拍手するマイク・ペンス副大統領の隣で、民主党のナンシー・ペロシ下院議長が目の前の原稿を手に取ると、カメラを意識するように、大胆に4回に分けてそれを半分に引き裂き、机の上にポンと放り投げた。

  • 一般教書の演説をするトランプ大統領。右後方がペロシ下院議長(ホワイトハウスのホームページから)
    一般教書の演説をするトランプ大統領。右後方がペロシ下院議長(ホワイトハウスのホームページから)

演説中も「そうじゃない」とつぶやく

   その様子を生中継していた米各ネット局のニュースキャスターらに動揺が走った。NBCニュースではふたりのキャスターの間でこんなやりとりが交わされた。

「Wait!(ちょっと待って!)」
「いや、驚きましたね。ナンシー・ペロシ氏がどうやら大統領の演説の原稿を破いたようですね」
「Wow!(まあ!)先ほど彼女が握手しようと手を差し伸べましたけど、気づいていなかったのかどうか、トランプ氏は握手しませんでしたね。彼女がトランプ氏を紹介した時にも、普通ならan honor and a privilege(名誉かつ光栄なこと)という表現を使いますけれど、そうは言いませんでしたね」

   ペロシ氏が手を差し伸べた瞬間、トランプ氏は演説するために背を向けたので、握手の手が見えなかった可能性もある。

   共和党寄りのFOXニュースも、演説が終わると驚きを隠せない様子で、まずそのことに触れた。

   ペロシ氏は破いた理由について、「Because it was the courteous thing to do, considering the alternatives.(他の選択肢よりは、礼儀正しい対応だったからよ)」と記者たちに語り、議会をあとにした。

   一般教書演説(State of the Union Address)とは、大統領が国の現状について見解と、直面する主要課題を述べる格調高いもの。時に拍手やスタンディングオベーションによる意思表明はあるが、野次やブーイングは行われない。今回のテーマは「偉大な米国の復活」だった。

   大統領は通常、議会に出席できないが、この日は議長より特別の招待を受ける。その下院議長が、ペロシ氏というわけだ。副大統領は上院議長を兼ねており、演説する大統領の後ろの議長席に2人が並んですわる。

   トランプ氏の弾劾裁判が行われていたのが、まさにこの議場だった。

   一般教書演説の翌日、ペロシ氏は非公開会合で、トランプ氏の演説は「うそだらけで汚らわしい」と激しい口調で非難。「彼は真実を引き裂いたから、自分はその原稿を引き裂いた」と話したという。

   トランプ氏は、議会に一般国民を招待した。それ自体は珍しいことではない。そのひとり、ラジオ・トーク番組の司会者で超保守派のラッシュ・リンボー氏には、その場で大統領自由勲章を授与した。

   ほかにも、ホームレスと麻薬依存の過去を乗り越え、成功した黒人ビジネスマン、奨学金を手に入れて大喜びする黒人のシングルマザーと娘などが招かれた。アフガニスタンに駐留する士官をサプライズで呼び、妻と娘たちと涙の再会という場面もあった。

   トランプ氏は演説のなかで、規制緩和や減税、雇用創出など、就任中に実施した経済政策を挙げ、経済的成功は前政権の失敗を覆した成果と強調した。教育や医療でも、就任以来の自分の業績を称えた。

   演説中にペロシ氏は何度も、「So untrue (そうじゃない)」とつぶやいていたようだ。

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