2020年 2月 22日 (土)

ここでは「二足歩行」が「障害」 車いす目線の「立場逆転」バリアフルレストランに行ってみた

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   車いすだと丁度いいのに、「二足歩行」だと利用しづらい――。そんな設計を施した実験的なレストランの体験イベントが2020年2月12日、東京大学本郷キャンパスでメディア向けに開催された。

   テーブルの高さは膝くらい。天井も約170センチしかなく、ちょっと背の高い人は立ったままだと屈まなければ入店もできない。しかし、車いすで利用すればまったくストレスがない。さまざまな設備が、実社会の健常者と障害者の立場を逆転させた形で作られている。

  • 店長の寺田ユースケさん
    店長の寺田ユースケさん
  • エントランス。立っていると、屈まなければくぐれない
    エントランス。立っていると、屈まなければくぐれない
  • 店内。天井の高さが抑えられている
    店内。天井の高さが抑えられている
  • 店はビュッフェ形式。この高さも車いすだと丁度いい
    店はビュッフェ形式。この高さも車いすだと丁度いい
  • テーブル。2つのおしぼりと、消毒用のスプレーがある
    テーブル。2つのおしぼりと、消毒用のスプレーがある

「ヘルメット、お貸ししましょうか」

   イベントを企画したのは公益財団法人日本ケアフィット共育機構(本部・東京都千代田区)が運営する「誰もが誰かのために共に生きる委員会」。すべての設備と接客態度を車いすユーザー目線でつくった設定の、バリアフリーならぬ「バリアフルレストラン」を試験的に「開店」した。

   体験会で実際に訪れると、まずエントランスの扉が、記者(身長188センチ)の胸の高さほど。車いすに乗った店長が「いらっしゃいませ」と出迎えてくれるが、扉が低いため顔もほとんど見えない。屈んで入店すると、天井の低さに驚く。直立しているとまともに歩けず、うっかりすると梁に頭が当たる。やってきた店員にかけられた言葉は「ヘルメット、お貸ししましょうか」。膝くらいまでしかないテーブルには、イスもない。低いテーブルで立ったまま食事しなければならず、腰が痛くなりそうだ。

   机上には、1人2つのおしぼりが用意されていることに気付く。1つは車いすを漕いで汚れた手を拭く用、もう1つは食事用だ。さらに、車いすのタイヤを触った手をアルコール消毒するためのスプレーも置いている。車いすユーザーにとってはごく普通の光景というわけだ。

   「仕掛け」は他にもある。床には車いすで移動しやすいよう、タイヤがかみやすいカーペットではなく、ツルツルとした素材を使用。トイレの男女のマークも、車いすに乗った人がデザインされている。壁には「二足歩行者のおもてなし」について書かれたポスターを掲示している。車いすに乗る店員は二足歩行者への対応に慣れておらず、「介助者の方はいらっしゃいますか?」と尋ねてくる。現実の健常者と障害者の立場が逆転した仮想世界として、「バリアフルレストラン」は作られている。

車いすだと「1ミリもストレスを感じずに過ごせた」

   企画段階からイベントに携わり、当日「店長」をつとめたのは、「車いすYouTuber」として活動する寺田ユースケさん。「完成形は大体分かっていたのですが、実際に自分がこのレストランに入った時、入口から出口まですべてが丁度良く、想像以上に1ミリもストレスを感じずに過ごせたのは驚きでした」と印象を語る。

   また、寺田さんは「現実社会で多数派の健常者と、少数派の車いすユーザーの立場が逆転したこのレストランでは、二足歩行であることが『障害』になります」「誇張したところもありますが、普段我々が感じている『嫌なことあるある』、不便を感じてしまう『あるある』を体感していただけるような表現ができ、面白い試みになっていると思います。障害者のことを分かってほしい、というより、楽しく一緒に考えていければなと思います」と話している。

   日本ケアフィット共育機構は、障害者や高齢者の暮らしを手助けするスキルがあることを示す民間資格「サービス介助士」の認定などを行っている。今回の「バリアフルレストラン」は、障害は個人でなく社会にあるとする考え方「障害の社会モデル」の浸透に向けた取り組みの一環。多数派としての健常者を前提につくられた社会の「当たり前」を問い直すきっかけづくりを目的としており、今秋には一般公開を予定している。

(J-CASTニュース編集部 青木正典)

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