2024年 4月 26日 (金)

「誰が指導者でも...」 ポンペオ氏が北朝鮮に仕掛けた「釣り針」

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   北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長の写真付きの動静報道が途絶えて10日以上。仮に正恩氏が執務できない状態になった場合、誰がその役割を引き継ぐかについて「頭の体操」も活発化してきた。有力視される人物の一人が、妹で党第1副部長の与正(ヨジョン)氏だ。

   そんな中で、米国のポンペオ国務長官は米メディアとのインタビューで、与正氏が指導者になった際の対応について聞かれて「北朝鮮の指導者が誰であろうと、我々は北朝鮮に核プログラムを断念してもらいたい」などと発言した。北朝鮮はこれまで「米国務長官ポンペオ」と呼び捨てにするなど、ポンペオ氏の発言に反発してきた経緯がある。今回の発言も北朝鮮を刺激するとみられ、北朝鮮側の反応が注目される。

  • 2018年5月に米国のポンペオ国務長官は平壌を訪問し、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長と握手していた(写真は労働新聞から)
    2018年5月に米国のポンペオ国務長官は平壌を訪問し、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長と握手していた(写真は労働新聞から)
  • 2018年5月に米国のポンペオ国務長官は平壌を訪問し、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長と握手していた(写真は労働新聞から)

「白頭山血統」重視するなら後継は正恩氏の子どもだが...

   北朝鮮は、「白頭山血統」と呼ばれる金日成主席の直系血族を重視する傾向がある。そのため、本来なら正恩氏の子どもが後継者として有力視されるところだが、まだ幼い上に国内外ともに知名度がゼロだ。そこで、すでに党の肩書を持ち、3月3日に自らの名義で韓国を非難する声明を出すなどして存在感が高まっている与正氏を後継として有力視する向きもある。

   こういったことを背景に、2020年4月23日(米東部時間)のフォックスニュースのインタビューで、与正氏が指導者になった場合の対応に関する質問も出た。ポンペオ氏は、引き続き米国が検証可能な形での核廃棄を求めながら、こういった方針は「北朝鮮を率いるのが誰であろうと同じ」だと繰り返した。

「与正氏には何回か会う機会があったが、課題は一緒だ。目標は変わらない。北朝鮮の指導者が誰であろうと、我々は北朝鮮に核プログラムを断念してもらいたいし、国家連盟(編注:6か国協議などの国際的枠組みを指すとみられる)にも参加してほしい。我々は北朝鮮国民の明るい未来を望んでいる。しかし、北朝鮮は非核化しなければならないし、それは我々が検証可能な方法で行わなければならない。それは北朝鮮を率いるのが誰であろうと同じだ」

「制裁維持」発言に「新任対米協商局長」が「妄言」と反発

   ポンペオ氏はシンガポールで行われた米朝首脳会談直前の18年5月に平壌を訪問し、正恩氏と笑顔で握手を交わしたものの、その後の北朝鮮との関係は冷え込んでいる。

   ポンペオ氏は20年3月25日(米東部時間)に先進7か国(G7)外相ビデオ会議後に開いた記者会見で、

「(イランと)同様に、G7をはじめとするすべての国が一致して北朝鮮に交渉復帰を求め、違法な核・弾道ミサイル計画に対して外交的・経済的圧力をかけ続けることに約束しなければならない」

などとして、制裁の維持を求めた。これに北朝鮮は反発。3月30日に北朝鮮外務省の「新任対米協商局長」が名乗らずに国営メディアを通じて声明を出し、ポンペオ氏の発言を

「われわれは、ポンペオの今回の妄言を聞きながら、再び対話意欲をより確信を持って引っ込めたし、米国が長期間、わが人民に被らせた苦痛をそのまま恐怖と不安で返してやるためのわれわれの責任ある計画事業にさらなる熱意を持つようになった」

などと非難した。就任から1か月が経った「対米協商局長」が、前回同様にポンペオ氏の主張に反論するとすれば、しかしその前提になっている正恩氏の動向に言及するかどうかも焦点となる。それを狙ってのいわば「釣り針」の可能性もある。

CNNの「重篤」報道は「古い資料を使ったと聞いている」

   ただ、米政権では正恩氏の「重篤説」に懐疑的な発言も出ている。トランプ大統領は3月23日の記者会見で、重篤説を唱えたCNNの報道について、

「その報道は正しくないと思う。(報道は)古い資料を使ったと聞いている」

などと発言。金氏と連絡を取っているかについては「言いたくない」とした上で、

「金正恩氏とはいい関係だ。無事を祈っている。CNNのフェイク報道だと思う」

などと話した。

   なお、北朝鮮の国営メディアは4月22日、シリアのアサド大統領に対して、金日成主席の誕生日にあたる「太陽節」の祝電に対する正恩氏名義の返信を同日付で発出したことを伝えている。記事に写真はついていないが、正恩氏が自らの名義の文書を決裁する程度の執務はできることを示す狙いもあるとみられる。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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