2024年 4月 24日 (水)

フリマ需要に「郵便局窓口」から悲鳴 不用品発送で利用者増も...日本郵便「ライフラインを担っている認識」

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   「客が通常の2倍以上」「『どう考えても不要不急だろう』と思われる手続きが大半」。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の影響で、各地の郵便局が窓口業務に追われ疲弊している実態が浮かび上がった。外出自粛の広がりでインターネットを介したフリーマーケットの需要増による郵送や、ハガキの交換、小銭の入金などのために訪れる客が後を絶たないという。

   屋内の局で多くの客と接する郵便窓口は「3密(密閉・密集・密接)」状態で日々業務にあたる。感染リスクへの不安を訴える声はもちろん、人との接触8割減は「我々にとっては机上の空論」という諦めに近い嘆きの声、さらに一部郵送物の取り扱い停止を求める声もある。

   一方で、替えの利かない郵便事業は新型インフルエンザ等対策特別措置法上の「指定公共機関」に位置づけられる。日本郵便は2020年4月30日のJ-CASTニュースの取材に「物流業務というライフラインを担っているという認識であり、現時点では、総量規制やサービス停止は考えておりません」としている。

  • 東京23区内のある郵便局で働くAさん
    東京23区内のある郵便局で働くAさん
  • 東京23区内のある郵便局で働くAさん

「さながら年末年始並みのお客様が殺到」

   東京23区内のある郵便局には5月1日夕、ざっと40~50人の客が訪れ、屋内で待機していた。立っている人も多く、もちろん隣り合って椅子に座る人も多い。この局で働くAさん(40代男性)は、「ピーク時には70人以上のお客様にお待ちいただいておりました」と話し、「さながら年末年始並みのお客様が殺到し、連日3密状態にあります。窓口社員は疲弊しきっています」と現状を明かす。

「仕事が休みになって時間ができた人達が、身の回りの不要になったものなどをECサイトで出品し、売れたものを発送しにくる方々が激増しています。それは、命と引き換えにしてまでも、今日出さなきゃいけないものなのでしょうか? 『不要不急』の意味が理解されているのでしょうか?」

   Aさんは「1日の間に700~800人のお客様が来られます。例年、春先でこれだけ混雑することはありません。ネットオークションやフリマアプリでの個人間取引のため、郵送を利用される方が非常に多くなっています」と明かす。特に混雑するのは15時以降だ。

   直営・簡易郵便局あわせて全国約2万3000局(3月末時点)を構える日本郵便。新型コロナウイルス拡大にともない、3月下旬から段階的に営業時間の短縮を進めている。公式サイトによると、郵便窓口は現在基本的に、小規模な局では15時まで、一部の大規模な局では19時(土日休日は18時)までの営業となっている(例外あり)。特に緊急事態宣言が最初に発令された7都府県では早期に短縮がはじまった。

   Aさんが勤める郵便局は19時までの営業。周辺の15時で閉まる局を利用できなかった人が、19時まで営業する局に集まるのではないかという。

「窓口にビニールカーテンをかけて飛沫対策をしていますが、荷物の受け渡しでカーテンをめくることが多いので、ほとんど意味をなしていません。特に夕方は常に50人以上のお客様が待っているような状態で、距離をとって屋外でお待ちいただくようお願いしていますが、強制はできませんし、雨の日は外で待たせるわけにいかず、結局ロビーまで入ってこられることが多くなります」

   今の願いとして、「正直に申し上げれば...お客様に来てほしくないというのが一番です。その用件が本当に『不要不急』でないかどうか、今一度考えていただきたいです。もし郵便局で感染者が出たら、一時的に営業を止めたり縮小したりせざるを得ません。そうなると管轄区域内の郵送網全体に影響が出かねません」と話している。Aさんはゴールデンウィーク(GW)中も複数回勤務する。

「人との接触を7割減らすなど、我々にとっては机上の空論です」

   巨大組織だけに、郵便局社員の感染者は断続的に確認され、日本郵便は都度発表している。4月30日夜時点で従業員の感染が確認された郵便局は21局あり、15局が窓口業務を一時休止。うち14局は消毒作業などをしたうえで、業務を再開した。

   最終的に局員9人の感染が判明し、クラスター(感染者集団)が発生した二本松郵便局(福島県二本松市)は7日に全ての業務を休止。約2週間後の22日に再開した際には、約17万通の未配達郵便物がたまっていた。

   日本郵便は利用者に対し、不要不急の用件、特に「大量硬貨の取り扱い」「郵便切手・はがき等の交換」での来局は控えるよう呼び掛けている。混雑状況によっては入場制限をする場合もあるとし、電話での問い合わせや、ATM、オンラインの「ゆうちょダイレクト」で代替可能な用件はそちらを検討することも呼びかける。

   J-CASTニュースの読者投稿フォームには4月後半、そんな郵便局の窓口スタッフから続々と切実な声が寄せられた。前出のAさんもその1人だった。共通しているのは、来局者数の2~4倍増と、その多くが「不要不急」とみられる用件であること、感染対策を不十分と感じながら日々仕事にあたっていることだ。

   東京都の郵便局で窓口業務にあたるBさん(40代男性)は「社会生活に必要な業種とされていますが、現実は不要不急の用で来局する人々が後を絶ちません」と、読者投稿で現状を明かした。仕事が自宅待機やテレワークとなり、家にいる時間が長くなった人の来局が増えたと感じている。

「できた時間で家を片付け、フリマアプリで売った不用品を発送に来る。貯めていた小銭をここぞとばかり入金に来る。不要になった書損葉書を交換に来る...。これらは本当に今しなければならない事でしょうか? 政府の外出自粛要請を無視した余りに身勝手な行動に、苛立ちさえ覚えます。我々はそんな中、いつか同僚の誰かが感染し、発症して、最悪死に至るのではないかと不安な日々を送っています」

   本社からは、局員へのマスク配布のほか、出社前の検温徹底の呼びかけ、体調不良時の有給休暇取得呼びかけなどがなされているという。しかし不安の払拭からは程遠く、自身の仕事について「テレワークなど不可能でしかありません。人との接触を7割減らすなど、我々にとっては机上の空論です」と嘆く。

「1日で何人と濃厚接触をしているのか分かりません」

   緊急事態宣言が最初に発令された7都府県の、19時まで営業する郵便局で窓口業務にあたるCさん(40代男性)も、「夕方から特に郵便窓口の大行列は本当に酷いものがあります。2メートル間隔ほどで足跡のマークを貼っていますが、間隔を取らずに並ぶ方がいて、3密状態のリスクを非常に強く感じています」と訴える。来局の用件も「『どう考えても不要不急だろう』と思われる手続きが大半なのです」という。

「3月までと比べて、現在は1.5倍から2倍ぐらいになっていると思います。明らかに増えたのが、フリマの商品発送のほか、『ハガキ・切手の交換』です。家にいる時間が長くなったからか、大掃除や家の片付けをされている方も多いようで、『古いハガキや切手が出てきた』と窓口へ持ってくる方がかなり増えました。2~3枚の方もいれば、何千枚という大量の切手を持ってくる方もいます。この『ハガキ・切手の交換』は、郵便窓口でも1・2を争う手間のかかる作業で、それを何千枚単位で持ってこられると2人がかりでも数時間は取られてしまいます。

郵便窓口はお客様と何回も会話のやり取りをします。1日で何人と濃厚接触をしているのか分かりません。お客様との決済はほぼ全てが現金であることも感染リスクを感じます」

   同僚との間でも「60歳ぐらいの社員さん、持病のある社員さんも多く、高齢の親御さんと同居されている社員さんもたくさんいるため、みなさんかなり疲弊しています。『身の危険を感じるし、自分や家族の命まで懸けられない』と言って辞めたいと言っている社員さんやパートさんもたくさんいます」という。

   Cさんはこうした現状に対し、「郵便局は営業自粛対象ではないため、窓口を閉めることは出来ないという点は仕方ないと思います」としたうえで、勤務体制についてこう求める。

「一番の望みは、会社として『不要不急の取扱いは全て断ります』と表明してほしいです。具体的には『はがき・切手の交換』『メルカリ等フリマアプリの発送』『大量硬貨の取り扱い』です。もう1つの望みは、緊急事態宣言発出日以降の出勤者には、時間単位で危険手当を支給してほしいです。私も死にたくありませんし、愛する家族を絶対に失いたくありません。職場のみなさんも当然そうだと思うのです」

「いつ感染してもおかしくない状態」「狭い局内が大混雑」

   郵便窓口のスタッフから、他にもこんな声がJ-CASTニュースに寄せられた。

「緊急事態宣言後、お客様は通常の2倍以上になり、特定局が時短になってからは更に3~4倍になり、ずっと行列です。全くお客様が途切れないので、毎回のお金、荷物を触った手の消毒などまるで出来ません。いつ感染してもおかしくない状態です。 1日だけ特別休暇を貰っただけです。このままだと、感染しなければ休めない状態です。せめて時短営業、土曜日休みを希望します」(Dさん・神奈川県40代男性)
「『はがき・切手の交換は時間がかるのでご遠慮ください』とあるのに持ってきて、何に変えるのか決まっていない。それなら今じゃなくても...と思ってしまいます。そういう客が窓口をふさいでしまうので、狭い局内が大混雑。さらにフリマの発送が今まで以上に増えました。フリマのサイトを一時的に閉じてほしいです。『不要不急の意味わかってますか?』と声を大にして言いたいです。コロナにやられる前に人にやられてしまいます」(Eさん・東京都50代女性)
「来局数は前年同月比でほぼ2倍になっています。毎日500人位の来局数で外国人も多く、対策は基本小さなフィルムカバーを垂らしているだけです。インフラとして閉められないのはわかりますが公平感が無く、命はみんな同じなのに、何故小さな局と大きな局とで営業時間に差をつけるのか、説明もありません」(Fさん・東京都)

「できる限りお客様に影響の少ない形で業務を続けていきたい」

   日本郵便の広報は4月30日、J-CASTニュースの取材に、次のような新型コロナウイルス感染対策を社員にとっているとする。

(1)出勤前の社員及び同居家族の健康状態の確認(具体的には、出勤前に37.5度以上の発熱等の症状がみられる場合は、速やかに管理者報告し、出勤させないこととしている)
(2)出張、会議等の原則自粛
(3)不特定多数が参加する催しへの参加自粛
(4)手洗い、咳エチケットの徹底
(5)私的旅行も感染防止策を徹底
(6)特別休暇の取得が可能であること(具体的には、学校施設等が臨時休業となっており育児のため出勤できない場合等)

   また、「出勤後は、熱が出るなどの体調に異変を感じた際には、管理者等に申し出るとともに、帰宅や医療機関への受診を指導してきました」とし、マスク着用については「マスクを購入できるよう予算を通知し、郵便局にてマスクを購入させ、社員が使用できる状況を整えているほか、マスクの配備も実施しています」とする。

   現時点で、新型コロナウイルスに関してさらなる対策や、社員への特別な手当の支給などを講じる予定はないという。現場の窓口スタッフから上記のように、不要不急とみられる来局者の増加と、それに伴う感染リスクの高まりを不安がる声があがっていることに対しては、こう述べる。

「弊社は新型インフルエンザ等対策特別措置法が定める指定公共機関として、郵便・物流業務を継続する必要があり、基本的には、政府、自治体の指示に従うこととしております。また、弊社は物流業務というライフラインを担っており、できる限りお客様に影響の少ない形で業務を続けていきたいと考えております」

「現時点では、総量規制やサービス停止は考えておりません」

   政府などの新型コロナウイルス感染症に関する措置は、改正新型インフルエンザ等対策特別措置法にもとづいて進められている。同法には「国、地方公共団体並びに指定公共機関及び指定地方公共機関は、新型インフルエンザ等対策を実施するに当たっては、相互に連携協力し、その的確かつ迅速な実施に万全を期さなければならない」(3条6号)などの定めがある。医療や医薬品、電気、ガス、輸送などを担う一部の法人は、この「指定公共機関」や「指定地方公共機関」に位置づけられており、日本郵便は前者に含まれる。

   郵便業務の運営について、日本郵便は次のように認識を述べている。

「弊社は物流業務というライフラインを担っているという認識であり、現時点では、総量規制やサービス停止は考えておりません。一方で、窓口時間の短縮や航空便の減便で引受けを停止し、ご不便をおかけしていることもありますが、できる限りお客様に影響の少ない形で業務を続けていきたいと考えております。

郵便物等の取集、配達等については、お客さまへの影響と感染拡大の防止に最大限配慮して、継続してまいります。お客さまにはご迷惑をおかけいたしますが、ご理解とご協力を賜りますよう、何とぞよろしくお願い申し上げます」

   GWも暦どおりに営業する。4月27日にはウェブサイトで「混雑緩和のお願い」を掲載。「例年、ゴールデンウィーク期間および前後の営業日は、大変多くの方のご来局およびATMのご利用による混雑が予想されます」とし、「つきましては、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点からも、可能な限りご来局等の時期を他の時期に分散いただければ幸いです。また、ご来局等をいただく場合は、できる限りマスクを着用し、お客さま同士の間隔を十分に確保するなど、ウイルス対策へのご協力をお願いいたします」と呼びかけている。

(J-CASTニュース編集部 青木正典)

<J-CASTニュースでは、新型コロナウイルス流行に伴い、「私たちの状況を取り上げてほしい、取材してほしい」「#現場を知って」といった声を受け付けています。https://secure.j-cast.com/form/post.htmlからご連絡ください>

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