2020年 10月 26日 (月)

岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち 
シアトル「占拠」自治区はなぜ生まれたのか

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「混乱」強調のFOXニュースが写真捏造の指摘

   ダーカン市長はCNNニュースのインタビューで、「トランプ氏や保守系メディアから流れる情報とはまるっきり違います。ブロックパーティ(ストリートで行われるコミュニティのお祭り)みたいですよ」と語った。

   警察との激しいぶつかり合いがなくなり、「逆に街は穏やかになった」との声も聞かれる。

   自治区に集まった人たちは、「警察がいなくなってから、穏やかになった」と口をそろえる。現地から流れてくる写真や動画を見る限り、おおむね穏やかで平和な雰囲気だ。通りにはスタンドが立ち、食べ物が無料で配られ、医療品などの生活物資が並ぶ。子供連れの姿も見られる。野菜作りや演奏、映画上映、詩の朗読なども行われている。

   地元のシアトルタイムズは、「自治区」の混乱の深刻さを強調するために、「FOXニュースが軍隊様式のライフル銃で武装した男性の写真を捏造し、別の街の放火の写真を使った」と指摘。FOXニュースはウエブサイトから写真を削除した。

   市警が懸念しているような「強奪や強姦は起きていない」と、否定する人も少なくない。とはいえ、そこには住民がいて商店もあり、実際に何か犯罪が起きた時に、現状では警官が駆けつけられない。安全に生活するために税金を払っている住民たちは今、無政府状態で暮らさざるを得ない。

   だが、シアトルはもともとリベラルな土地柄で、民主党寄りの都市だ。「自治区はごく一部の地域で、今は穏やかだ」という住民の声も少なくない。

   6月12日の早朝には、男性が警察署東管区の建物を放火しようとした。が、その場にいた人たちが消火に当たったため、大事には至らなかった、との報道もある。

   自治区に集まっている人々は、「左派、ラディカル、アナキストだ」とトランプ大統領や右派は主張しているが、人権擁護団体などさまざま団体のメンバーで、興味本位に自治区を見に訪れる人たちもいる。

   自治区から流れてくるネット上の動画では、辺りが真っ暗な中で、男性がマイクを使って大声で次のように演説している。

   「これを聞いている住民たちに言いたいことがある。こんなに大声で騒いでいるから、怒りを覚えているだろう。でも我々の任務を達成したら、ここから出ていく。だから怒らないでくれ。怒るべき相手は、市議会、市長なんだ。現状を改善しようとしている僕たちじゃない。僕らは必要な限り、大声を上げ続ける」(随時掲載)

++ 岡田光世プロフィール
おかだ・みつよ 作家・エッセイスト
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓を描いている。米中西部で暮らした経験もある。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1弾から累計40万部。2019年5月9日刊行のシリーズ第9弾「ニューヨークの魔法は終わらない」で、シリーズが完結。著書はほかに「アメリカの家族」「ニューヨーク日本人教育事情」(ともに岩波新書)などがある。

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