2020年 10月 22日 (木)

旧式火力9割削減でも「石炭頼み」は続く? そのカラクリとは

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   政府が二酸化炭素(CO2)を多く出す旧式の非効率な石炭火力発電所の9割を2030年度までに削減する方針を突然打ち出した。

   地球温暖化対策として欧州を中心に石炭火力を削減・廃止する動きが広がっている中で、日本は具体的な削減計画を示さず、批判されてきた。ようやく重い腰を上げた形だが、高効率の石炭火力は認める方針であるほか、具体的な手順、エネルギー構成との整合性など、実現への道のりは平たんではない。

  • 石炭火力発電の行く末とは
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世界では「脱炭素化」の大きな潮流

   梶山弘志経済産業相が2020年7月3日、こうした方針を発表し、「2030年に向けて(低効率な石炭火力の)フェードアウト(段階的な縮小)を確かなものにする」と述べた。

   国内の石炭火力は約140基。このうち114基が低効率の旧式で、国内の石炭火力による発電量の約半分を占める。「9割削減」は旧式100基程度を廃止することになる。経産省は近く有識者会議を設置し、発電事業者に休廃止を促す仕組みや、休廃止後に電力を賄う方法について議論する。具体的には、旧式の石炭火力の発電量の上限設定、早期に旧式火力を休廃止する場合の費用の一部助成などを検討するとみられる。

   東日本大震災以降、停止した原発の代替電源として液化天然ガス(LNG)や石炭火力の比率が高まった。特に石炭は原油や天然ガスと比べ安く、世界各地で産出されるので資源小国の日本でも安定して調達できるとして、経産省や産業界は「石炭火力維持」を譲らなかった。これが一転、旧式石炭火力の休止に踏み切った背景には、世界での脱炭素化の大きな潮流がある。

   石炭火力はCO2の排出量がLNG火力の約2倍と多く、温室効果ガス排出削減を進める国際的枠組み「パリ協定」に基づき、フランスが2022年、英国が25年、ドイツも38年までに石炭火発を全廃する方針を示すなど欧州を中心に多くの国が石炭火力の具体的な廃止目標を設定。その一方、日本は18年7月に策定したエネルギー基本計画で、非効率な石炭火力について、数値やテンポなしに「フェードアウトに取り組む」とするにとどまっていた。

代替電源の確保は?

   こうした「国策」のため、小泉進次郎環境相が国際会議などで「(石炭火力は)Reduce(減らす)」と述べて、「How(いかにして)?」と突っ込まれて返答に詰まるなど、世界的に批判されてきた経緯がある。

   この間、「脱石炭」を訴える非政府組織(NGO)が、みずほフィナンシャルグループの株主総会でパリ協定の目標に整合した投融資計画の開示を求めた株主提案が35%の支持を集めるなど、世界の「脱石炭」のうねりが高まる中、非効率に限ってとはいえ、脱石炭火力に方向転換せざるを得なくなったといいうことだろう。

   だが、実際には簡単なことではないようだ。

   まず、電力会社の経営への打撃だ。北陸電力50%、中国電力48%、北海道電力46%、四国電力42%など、概して地方の電力会社の石炭依存度が高い。例えば四国電は石炭火力3基のうち2基が稼働から50年に達する旧式の非効率火力だ。北海道電も石炭火力7基のうち6基が非効率。火力の減価償却は概ね15~20年で終わり、そこからが「金のなる木」であり、電力会社の収益を支える。泊原発が停止したままの北海道電は燃料費が割安な石炭火力頼みの運営だ。2018年9月の北海道地震に伴い全域停電(ブラックアウト)した経験もあり、非効率発電休廃止は電力の安定供給の面でも簡単ではない。

   代替電源の確保も大変だ。発電量に占める電源別の比率は2018年度で天然ガス38%、石炭32%、再生可能エネルギー17%、石油7%、原発6%。エネルギー基本計画(2018年7月策定)では、2030年に石炭26%、原子力20~22%、再生エネ22~24%などとしている。温室効果ガス排出を30年度に13年度比26%減らすという国際公約の前提が、この構成比だ。

新鋭設備への更新を進める姿勢

   ただ、福島第1原発事故(2011年)に伴う全国の原発停止から10年近くがたって原発の再稼働は9基にとどまり、原子力の比率を目標の20%に高めるのに必要な30基には遠く及ばない。他方、再生エネは高コストであることもあって、22%の目標達成も容易でなく、原発の穴を埋めることを期待するのは無理がある。このため、「石炭頼みは続く可能性が高く、非効率石炭火力が多いままでは温室効果ガス削減目標が達成できない恐れがある」(大手紙経済部デスク)。

   裏を返すと、石炭火力を減らすというより、新鋭設備への更新が主眼になりそうだ。梶山経産相も30年に石炭26%目標は「今の時点では変わりない」と言明し、新鋭設備への更新を進める姿勢に変化はない。

   ただ、高効率といっても、古い非効率のものよりは2割程度効率がアップするが、なおLNG火力に比べればCO2排出量は多い。学者などからも「旧式廃止が石炭火力を続ける免罪符にならないか」との懸念の声が出る。

   エネルギー基本計画は2021年に改定期を迎える。これに向けての議論の号砲が今回の非効率石炭火力廃止だ。梶山経産相は7月9日に洋上風力発電の拡大方針を打ち出すなど、再生エネ拡大の姿勢も示す。原発の扱い、再生エネの拡大、石炭依存の低減を含めた総合的な見直しは避けて通れない。

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