2021年 3月 8日 (月)

TikTokアカウント停・休止は「転ばぬ先の杖」? 埼玉県と神戸市に理由を聞いた

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   埼玉県と神戸市が、中国企業傘下の動画アプリ「TikTok(ティックトック)」に設けていた公式アカウントを止めた。理由は県民・市民からの「不安の声」。どちらも、「保有する行政情報や職員情報が洩れた可能性はない」とする一方で、「将来、中国共産党側への情報流出などが起きてしまえば、公的機関としてお叱りを受けかねない」(埼玉県)。つまり、「転ばぬ先の杖」としての対策のようだ。アカウントの停止は一部メディアが報じ、J-CASTニュースの取材に対しても両自治体が事実関係を認めた。

   埼玉県は2020年2月、TikTokのメイン利用者層である10~20代をターゲットにした県のPRのために公式アカウントを開設。手をオッケーサインの形にして胸の前で交差させる「埼玉ポーズ」やダンス動画など「ゆる~い動画」(県広聴広報課の「魅力発信」担当者)に加え、新型コロナウイルス禍で「ステイホーム」を呼び掛ける県出身の著名人によるメッセージ動画など、20本前後を投稿していた。

  • TikTokをめぐる情報漏洩疑惑が盛んに報じられる中、自治体は住民の懸念を受け止めざるを得ない状況だ
    TikTokをめぐる情報漏洩疑惑が盛んに報じられる中、自治体は住民の懸念を受け止めざるを得ない状況だ
  • 神戸市は公式TikTokアカウントで王子動物園の動物の短編動画を公開していた(市のウェブサイトから)
    神戸市は公式TikTokアカウントで王子動物園の動物の短編動画を公開していた(市のウェブサイトから)
  • TikTokをめぐる情報漏洩疑惑が盛んに報じられる中、自治体は住民の懸念を受け止めざるを得ない状況だ
  • 神戸市は公式TikTokアカウントで王子動物園の動物の短編動画を公開していた(市のウェブサイトから)

万が一の個人情報流出、「お叱りを受けることになりかねない」

   7月に入り、TikTokをめぐって米国が安全保障上の懸念から利用を禁止する検討を始め、関連する報道が増えると、県民から「中国企業が運営していてアメリカでも問題視されているが、県が利用しても大丈夫なのか」といった不安の声が寄せられたという。

   動画は、県のサーバーからアップロードするのではなく、専用のタブレット端末から投稿していた。「県が保有する行政情報や職員の情報が流出することはあり得ない」(担当者)とのことだが、検討の末、7月20日ごろに公式アカウントを停止した。

埼玉県とバイトダンスによる広報業務の協定締結式(2020年6月、県のウェブサイトから)
埼玉県とバイトダンスによる広報業務の協定締結式(2020年6月、県のウェブサイトから)
「埼玉県が公式に使っていることで、アプリに対する信頼感、安心感を与えてしまうのも事実です。万が一、後にTikTokから中国共産党に個人情報が流出していることが判明してしまえば、お叱りを受けることになりかねないと判断しました」(県広聴広報課の「魅力発信」担当者)

   今後は「県民の不安が払拭されるまでは利用しない」としている。

動物園や水族館の「緩い動画をあげていただけ」

   神戸市も若者層への情報の発信をめざし、今年4月にTikTokの公式アカウントを開いた。市立の王子動物園のコアラや須磨水族館のイルカなどの動画を中心に30本前後をアップロードしていた。ちょうど新型コロナ禍で外出自粛を求められていた時期で、動物園も水族館も閉鎖されていたため、「自宅で癒しを感じてもらいたかった」(市広報課の係長)という。

神戸市は公式TikTokアカウントで王子動物園の動物の短編動画を公開していた(市のウェブサイトから)
神戸市は公式TikTokアカウントで王子動物園の動物の短編動画を公開していた(市のウェブサイトから)

   神戸市でも7月ごろから日に1~2件くらいの頻度で市民からTikTokに対する安全性への懸念の声が寄せられたほか、アメリカなど海外でのアプリに対する安全性への疑念が指摘されていたことを踏まえ、8月3日にアカウントを非公開にした。神戸市でも動画のアップロードは専用のタブレット端末からで、市の事務処理に使うシステムとは完全に切り離されていたという。

「正直、我々ではアプリの危険性は全く分かりません。とはいえ、市が公式アカウントを運営することで、市民にTikTokアプリの利用を促進する側面もあります。市民サービスに直接影響を与える情報を発信していたわけではなく、緩い動画をあげていただけなので、総合的に判断し、『とりあえず止めとこう』ということになりました」(市広報課の係長)

   埼玉県、神戸市とも、今後の国の対応などによっては、アカウントの再開を判断するという。

   埼玉県、神戸市とも、TikTokの運営会社「バイトダンス」の日本法人と協定を結び、行政情報のPR活動に関して連携を進める予定だった。が、どちらもアカウント停止とともに、取り組みも止めている。

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   同様に、大阪府と広島県も、バイトダンスと情報発信面での連携協定を締結している。現時点でアカウント停止の動きはないが、いずれも今後、「日本政府の動きをみながら必要に応じて対応する」としている。大阪府の吉村洋文知事は8月3日、ツイッターに次のような投稿をしている。

「小中高生に例えばコロナで医療従事者やその家族への差別はやめよう等、伝えにくい層に効果的に伝えることができます。ただ、ここ数日の米政府の動向も踏まえ、我が国の安全保障上の課題の有無を国に問い合わせます。その回答を踏まえ、大阪府としての判断をします」

専門家「証拠ない段階でやめるのは残念」だが、「今回の対応はやむを得ない」

   そもそも、TikTokをめぐって指摘されている情報漏洩の疑惑は、どれだけ深刻なのだろうか。ITジャーナリストの三上洋さんはこう解説する。

「運営会社のバイトダンスから、中国政府に利用者の情報が漏れているという証拠は現時点ではありません。ただ、バイトダンスは、中国・ウイグル問題について訴える動画を投稿していたアフガニスタン系アメリカ人の少女のTikTokアカウントを削除したことがあります。バイトダンスは『ミスだった』と釈明していますが、苦しい言い訳で、バイトダンスが中国政府に何らかの忖度をしているのだろうと想像できます。つまり、情報漏洩の疑惑はあるかもしれない、という『グレー』の状態です」

   それでは今回の自治体の動きについてはどう見るか。

「自治体が低年齢層にPRするためにTikTokを活用することは大賛成ですが、今回のように証拠がない段階でやめてしまうのは残念です。もう少し確たる情報が得られるまで待ってもよかったのではないでしょうか。ただ、自治体は住民あってのものですし、住民から抗議もあったようですから、TikTokを続ける強い意志を持ち続けられないことも理解できます。今回の対応はやむを得ないでしょう」

   自治体の動きに対し、バイトダンス日本法人は次のようにコメントしている。

「連携協定を結んでいただいている自治体様ならびに自治体在住の皆様にご心配をおかけしていること、大変申し訳なく思っております。自治体様に安心安全にご利用いただけるよう、万全のセキュリティ体制で運用を継続するとともに、自治体様のご判断に資するべく、可能な限りの情報提供等を続けてまいります。今後も透明性をもって説明責任を果たしつつ、自治体様のご指導の下、連携協定の内容に真摯に取り組んでまいりたいと考えます」
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