2021年 3月 4日 (木)

リニア計画「静岡県の壁」打開策見えず 追い詰められたJR東海の窮地

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専門家会議は打破できるか

   トンネル掘削で湧き出る水が静岡県外に流出し、県民約62万人が生活用水や農業、工業用水として使う大井川の流量が減る懸念があるというのだ。JR東海の試算では湧水は毎秒最大2トンで、トンネル貫通後は別に掘る導水路を使って全量を戻すと表明しているが、工事期間中は一定量が流出することが判明し、静岡県は「一滴も譲らない」と態度を硬化。流域10市町の首長も県を後押しし、解決の見通しは立っていない。

   もう一つ、水を戻して中下流の水量は確保できたとしても、南アルプスの生態系の問題もある。JR東海は、トンネル掘削完了から20年後、地下水位の低下によって渇水期の上流の沢の流量が最大で7割程度減少するとの試算を示している。「南アルプスの希少な生物がいる環境をどう守るか」(難波喬司・静岡県副知事、7月16日) という点も、今後の注目点になる。

   タイムリミットを控え、金子JR東海社長が6月27日、さらに7月10日には国土交通省の藤田耕三事務次官が、それぞれ川勝知事を訪ねて会談し、着工への理解を求めたが、合意には至っていない。

   今後の展開については、水資源問題などを検討する県専門部会と、4月に国土交通省が設置した有識者会議での検討がカギを握るとみられる。特に国交省の有識者会議は、JRと県の協議の難航を受けて、国が前面に出て設けた組織で、「湧水全量の戻し方」と「地下水への影響」を中心に河川工学やトンネル工学の専門家が検討を始めている。

   政治の世界で膠着した問題、特に科学的な専門性の高いテーマの場合、専門家の意見を参考にするのは、新型コロナ禍を見るまでもなく、必要なことだ。成田空港問題では、経済学の重鎮といわれる学者の仲介で円卓会議を設けて反対派農民と国の話し合いが行われ、最終的に、拡張工事の一部変更を経て合意に達したという前例もある。

   こうした場合、省庁が政策へのお墨付きを得るセレモニー化した審議会では話にならない。専門知識を持つ「権威」と、第三者の立場での議論が必須条件になる。この点、国交省も十分に配慮して人選したというが、7月16日の第4回会議後の記者会見で、座長を務める福岡捷二・中央大研究開発機構教授(土木工学)が「方向性が見えてきた。JR東海の計算による限り、トンネルを掘っても下流の水利用に悪影響にならないのではないか」と述べ、川勝知事が後日、「座長がいきなり価値判断をした。事実の提示と価値判断は別個のものだ」と批判するなど、先行きに不透明感も漂う。

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