大阪府の高槻市営バスが公式サイトで開設している「お客様の声」が、ツイッター上で大きな話題になっている。
バスに搭載したドライブレコーダーを武器に、理不尽な主張にも負けていないといった点だ。市の交通部に話を聞いた。
お釣り300円もらえなかったとの主張には、「『お客様』と3回呼びかけた」
「とにかく、降りろ!!」。ある乗客は、駅前近くで市営バスを降りようとしたとき、520円を支払ってお釣りを取ろうとしたところ、バスの運転手からこう怒鳴られたと主張した。
これは、2020年10月に乗客から寄せられた意見・苦情で、お客様の声サイトに「乗務員の対応」と題して載せられた。
それによると、この乗客の後ろに降りる人が並んでいたため、運転手が急かしたという。この乗客は、怖くなってそのまま降りたといい、お釣りの300円をもらえず腹が立ったと訴えていた。
これに対し、市営バスでは、ドラレコの映像や運転手の話から、次のように回答した。
「運賃箱に520円を投入されたので、後ろのお客様に降りていただけるようジェスチャーとともに『少し前の方によけてもらえますか。』と声をかけましたが聞こえておらず、再度『少しよけてもらえますか。お返しいたしますので』と声をかけると、バスから下車し駅の方に歩いて行かれ、当該乗務員が運転席から『お客様』と3回呼びかけたが、そのまま行ってしまったものでした」
また、同じ10月の意見・苦情では、マクドナルドから車で道に少し出ると、前を通る市営バスの運転手からにらまれ、次の信号で「なんですか?」と聞くと、片手で振り払う動作をして怖かったというクレームがあった。これに対しては、ドラレコの映像から、事実とは違い運転手には問題なかったとして、「今後とも市営バスのスムーズな運行にご協力お願い致します」と呼びかけた。
「今の時代必要だし乗務員を守る事になる」と支持する声
10月分は、12月2日に公式サイトで公開され、ツイッターで3日に上のような内容が紹介されると、大きな反響を呼んだ。
8万件以上もの「いいね」が付いており、「ドラレコがモンスタークレーマー対策になってて面白い」「これくらいの姿勢が今の時代必要だし乗務員を守る事になる」といった声が寄せられている。
お客様の声では、クレームが妥当なケースでも、市営バスの対応をその都度説明している。
自転車にぶつかりそうになったとの訴えには、ドラレコ映像から間隔が不十分だったとして運転手を指導したと明らかにした。また、運転手がバスの横で喫煙した、バスから水しぶきをかけられたといった指摘には、厳しく注意したと報告した。
感染が拡大している新型コロナウイルスを巡る意見も多く、運転手がマスクをしていなかった、車内でマスクをしなくてよいか、といった声も寄せられて、運転手を指導したり客に着用をお願いしたりしていることを丁寧に説明していた。
もっとも、運転手が荷物を持って降りてくれた、救急対応で命を救ってもらったなどと、市営バスへの感謝の声も次々に寄せられている。
「市営バスのいいところも悪いところも含めて見てもらう」
高槻市交通部の総務企画課では12月4日、公式サイトにお客様の声を載せている理由について、J-CASTニュースの取材にこう話した。
「地域に根差した、市民に愛される市営バスにしようと、2018年1月に市のサイトから独立したものにして、その年の12月にお客様の声を載せ始めました。情報発信のコンテンツの1つとして、市営バスのいいところも悪いところも含めて見てもらうのが目的です。月に平均15件ぐらい電話やメールなどで意見が寄せられていますが、クレームの方が多いですね。それへの回答を作って過去1年分を公開しています。同じ声ならまとめることもありますが、原則として、来たものはすべて載せています」
ドラレコは、市営バスで事故が起きたときの原因究明に役立てようと、10年前から搭載している。バスの外側には前後左右4か所、バスの内側には運転席近くと乗客席の中ほどの2か所に設置されている。
すべてのバスに搭載されており、録画したものを必要に応じて後からチェックしているそうだ。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)