2021年 5月 14日 (金)

民放AMラジオの存廃問題 2023年に起きるコト

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   AMステレオ放送の存在意義を失わせる要因のひとつになった「ワイドFM」(FM補完放送)が、AM放送そのものの行方にも影響を与えつつある。民放ラジオ局の厳しい経営環境を背景に、日本民間放送連盟(民放連)は総務省に対して、AMをやめてFMに一本化することもできるように制度改正を要望。総務省の有識者会議は要望を受け入れる形で具体的な検討を進めている。

   ポイントになりそうなのが、放送局の免許が更新される2023年と28年。23年の時点で、地域や期間を限定してAMを停波する「実証実験」を行い、その結果を踏まえる形で、28年にAMを停波してFMに一本化する放送局も出そうだ。

  • AMを停波する「実証実験」が2023年11月に予定されている(写真はイメージ)
    AMを停波する「実証実験」が2023年11月に予定されている(写真はイメージ)
  • AMを停波する「実証実験」が2023年11月に予定されている(写真はイメージ)

2028年までに「経営判断によって」FMへの一本化を可能にするよう要求

   この問題の議論は、総務省の「放送を巡る諸課題に関する検討会」の「放送事業の基盤強化に関する検討分科会」で進められている。AM停波論の実質的な議論が始まるきっかけになったのは、19年3月の会合で民放連が行った要望だ。

   民放連の当時の説明によると、AMを運営する放送局では、ピーク時の1991年度に2040億円あった営業収入が2017年度には約6割減の797億円に減少。FMもピーク時の00年度から35%減少してしている。少なくとも25年度まではAM、FMともにラジオの営業収入は落ち込みが続く見通しなのに加えて、AMの大規模送信施設を、放送を続けたまま同じ敷地内で更新することは困難で、

「民放ラジオ事業者の財政力で実施できる設備投資には、限界がある」

と訴えた。その上で、ワイドFMの制度を見直すことで「AM放送からFM放送への転換や両放送の併用を可能とするよう制度を整備する」ことを求めた。放送局の免許は5年ごとに更新される仕組みで、次回の更新は23年。民放連は23年までに、AM放送を一部地域で時間停止できる「実証実験」のための制度を整え、遅くとも28年までに「AM放送事業者の経営判断によって」AMからのFMへの一本化や、AMとFMの併用を全国的に可能にするように求めた。

災害用ラジオで「FMが聞けないことを災害時まで気づかなかったということがないように」

   この民放連による要望を受ける形で、19年8月の会合では「現行制度を見直すべき」だとする「基本的な方向性」が確認された。ただ、この「現行制度」に見直しには、解決すべき課題も出てくる。

   20年6月の「放送事業の基盤強化に関する取りまとめ」では、(1)カバーエリア(2)対応受信機(3)周知広報、などの課題を指摘している。具体的には、(1)AMは山間部にも電波が届きやすいが、FMに転換すると受信できなくなる。この地域にいかにして情報を届けるかを検討する必要がある(2)90.1MHz(メガヘルツ)より高い周波数を使うワイドFMに対応した家庭用ラジオの普及率は5割程度と推計されており、これを引き上げる必要がある(3)災害時の備品として買ったAM専用ラジオについて、FM放送が聞けないことを災害時まで気づかなかったということがないように周知することが必要。NHKはAM放送を継続することについても周知が必要、といった課題だ。なお、NHKは20年8月に発表した21~23年度の経営計画で、2波あるAM放送を1波に減らす方針を示している。

FM中継局の整備やケーブルテレビの再送信で「世帯カバー率」上げる

   20年11月には総務省が「実証実験」の具体的な案も公表し、意見を募集(パブリックコメント)している。公表された案によると、停波の時期は3か月~1年程度を想定。FMへの移行で「ある程度世帯・エリアカバー率が低下することはやむを得ない」とする一方で、世帯カバー率は、FMのみで放送を行っているラジオ局と同様の、約90%を満たすように求めている。その方法として、FMの中継局を整備したりケーブルテレビで再送信したりことを挙げているが、radikoは「輻輳・遅延等が避けられず、放送品質の確保が保証されない」として対象外だ。さらに、トンネル内で放送が再送信される放送はAMの場合が大半で、FMについても再送信ができるようにして、エリアカバー率の確保を求めている。また、災害時にはAM放送がすぐに再開できるように、手順・体制等をあらかじめ確認することも求めている。さらに、

「AM放送のFM転換は民間ラジオ放送事業者の経営判断により行われるものであることから、国による財政支援は想定していない」

ともクギをさしている。

   総務省は21年1月時点で、放送局に対して「実証実験」の参加に関する意向調査を行っており、それを踏まえて21~22年にかけて関係する制度を改正。最初の実証実験は23年11月を予定している。総務省では、実証実験に対するAM局側の対応として以下の4パターンを想定。従来どおりの周波数で引き続き番組が聞ける地域と、そうでない地域があるため注意が必要だ。

(1)実証実験に参加しない事業者(AM停波・FM転換を行わない事業者)
(2)AM中継局の停波を行う事業者(親局はAMで継続)
(3)親局を FM に転換するが、AM親局又はAM中継局の運用を継続する事業者
(4)AM親局・中継局とも完全に停波する事業者

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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