2024年 4月 19日 (金)

宝塚ファンにも刺さる?少女歌劇アニメの世界 観劇歴「研15」ヅカオタ記者が魅力解説

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   奇しくも「少女歌劇」と関連性の強いアニメ作品が、同時期に放映・公開される。2021年7月からアニメ放送予定の「かげきしょうじょ!!」と、6月4日に劇場版が全国で公開された「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」である。

   どちらも舞台を目指して学園で学び暮らす少女たちが主人公という共通点があり、ストーリーや随所で使われる用語に宝塚歌劇団の影響が大きくうかがえる。こうなると、宝塚観劇歴研15(宝塚用語で入団〇年目を研〇と呼ぶ)の記者としては放置するわけにはいかない。「歌劇」という共通の土台を持つ2作品を比べてみた。

  • 「かげきしょうじょ‼」アニメPVより(c)斉木久美子・白泉社/「かげきしょうじょ!!」製作委員会
    「かげきしょうじょ‼」アニメPVより(c)斉木久美子・白泉社/「かげきしょうじょ!!」製作委員会
  • 「劇場版 少女☆歌劇レヴュースタァライト」キービジュアル(C)Project Revue Starlight
    「劇場版 少女☆歌劇レヴュースタァライト」キービジュアル(C)Project Revue Starlight
  • 「かげきしょうじょ‼」アニメPVより(c)斉木久美子・白泉社/「かげきしょうじょ!!」製作委員会
  • 「劇場版 少女☆歌劇レヴュースタァライト」キービジュアル(C)Project Revue Starlight

「紅華歌劇」目指す少女たち

   「ジャンプ改」「MELODY」で連載中のコミックを原作としたアニメ「かげきしょうじょ!!」の舞台は関西・兵庫県、100年の歴史を持つ紅華歌劇団の団員を育成する紅華歌劇学校である。

   主人公は歌舞伎俳優の家系に生まれた「オスカルを目指す」少女渡辺さらさ(演:千本木彩花さん)と、トップアイドルグループJPX48の元メンバーだった奈良田愛(演:花守ゆみりさん)の2人。彼女らを中心に紅華歌劇100期生の学園群像劇が描かれる。物語は紅華歌劇学校の入学試験で偶然2人が出会うところから始まる。

   紅華歌劇団の人気演目は「ベルサイユのばら」「ファントム」、4組に分かれてそれぞれの組にトップスターがいるシステム、歌劇学校は1年目が「予科」2年目が「本科」、厳しい上下関係や独特のルールなど、マンガの中の劇場や街の描写は現実の宝塚や周辺の都市を忠実になぞっており、宝塚ファンなら「あるある!」と共感できてしまう。

   さらに主人公たちの憧れとなる紅華歌劇では、宝塚と同じようにトップスターがいるうえ、また宝塚に精通していれば「あの人がモデルなのね」とピンときてしまう現役の紅華歌劇ベテランスターも登場する。

   ただ、作中の紅華歌劇学校の制服は宝塚音楽学校と異なりセーラー服スタイルで、世間から隔絶した学び家というカラーは薄められている。あくまで紅華乙女を目指す少女たちの群像劇であるが、そこに少女達が憧れる華やかなショーや舞台、アイドルといった隣接カルチャーでの出来事が盛り込まれて、読者の様々な共感を誘う仕掛けだ。

   根底にあるのはスポーツや音楽と同じように「歌劇」に一度しかない青春をたぎらせる少女と、それを見守る大人たちのドラマ。アニメではどう描かれるだろうか。

「かげきしょうじょ!!」と「レヴュースタァライト」を比べてみる

   「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」の歴史は2017年にさかのぼる。当初からアニメ・舞台の二本立てで複合的に展開していくプロジェクトとして始動、17年には既に舞台版が初演され、次いで2018年にはテレビアニメが放映、2020年にはアニメ版に新規シーンを加えた「再生産総集編」として劇場版第1作「少女☆歌劇 レヴュースタァライト ロンド・ロンド・ロンド」が上映されている。21年6月4日に封切られた劇場版第2作は完全新作劇場版として新エピソードが披露される。

   舞台は100年の歴史を持つ聖翔音楽学園で、メインキャストは学園の俳優育成科に在籍する99期生のうち9人の少女。「九九組」と呼ばれるこの9人のメインキャストの中でもストーリーを左右するのが愛城華恋(演:小山百代さん)と神楽ひかり(演:三森すずこさん)の幼馴染の2人。聖翔音楽学園に、イギリスの名門学校からひかりが転入してきたことで歯車が回り始める。このあたりは、渡辺さらさと奈良田愛の偶然の出会いから物語が始まる「かげきしょうじょ!!」と似通っている。

   しかし「ガラスの仮面」「アラベスク」のような作品かと思えばさにあらず、本作の世界観は複層的で謎が多い。9人の少女は突如「オーディション」という名の戦いに参加し、「レヴュー」における「トップスタァ」の座を巡ってバトルを繰り広げる。

   さらに舞台版やコミカライズ版では他校の生徒まで参戦するというバトルロイヤルが展開され、そこで明かされる少女同士の感情のぶつかり合いが見どころでもある。

「レヴュースタァライト」は舞台も魅力

   そもそも「スタァライト」とはもとは学園で99期生が毎年学園祭「聖翔祭」で上演する戯曲のタイトルなのだが、少女たちの悲恋ものというあらすじと古代ギリシア風の装いが時折映し出されるにとどまり、具体的な演劇シーンは本作には少ない。それが「レヴュー」という名の少女たちのバトルにおいては「スタァライトしちゃいます!」のセリフで全く別の意味を持ち始める。

   「かげきしょうじょ!!」が原作コミックで芝居の稽古シーンで人物の葛藤を描いてきたのとは異なり、全貌を明らかにしないことであえて視聴者の興味を惹こうとしているかのようだ。

   映像表現もシュールで、突如現れてオーディションを宣言する「キリン」(何と声優は津田健次郎さん)が現れたり、少女たちの過去・現在・そしてレヴューシーンにおいて度々登場したりする東京タワーは一体何を意味しているのか、ファンが抱く謎は深まる。

   そして本作の核心でもある「トップスタァ」になれば何が得られるのか、彼女たちが目指す高みとは何なのか、もはっきりとは明かされていない。謎めいた世界観の解釈は、観る人それぞれにゆだねられている。

   「トップスタァ」「レヴュー」いずれも宝塚などの少女歌劇で馴染みの言葉だが、それらの文化をモチーフにしつつも独特の世界観でファンを惹きつけている。

   アニメだけでなく舞台も見逃せないのが「レヴュースタァライト」で、アニメの声優キャストが舞台版にも一貫して出演している。こちらはミュージカル形式かつライブパートもあり、アニメ同様「レヴュー」のバトルでの殺陣もありと2.5次元舞台としての完成度も高い。メインキャストの9人が舞台版でも同じキャラクターを演じて経験値を積んできた。

どちらも宝塚の関連スタッフが制作に参加

   なお、「100期」(「かげきしょうじょ!!」)「99期」(「レヴュースタァライト」)と主人公たちの期が近接しているのも宝塚の影響ではないだろうか。1914年創設の宝塚歌劇は2014年に100周年を迎えてエンタメ界でも大きく取り上げされ、以後コロナ感染拡大の打撃を受けるまで観客動員もうなぎ上りであった。

   また、双方ともに奇遇にも宝塚で公演制作に携わったスタッフが参加しており、舞台「レヴュースタァライト」の演出は1997年から2013年まで宝塚に在籍した演出家の児玉明子氏が一貫して手掛け、「かげきしょうじょ!!」の音楽担当の斉藤恒芳氏も宝塚の公演で楽曲提供の経験がある。

   女性だけで構成される「少女歌劇」は他の演劇ジャンルと絡みあいながらも、宝塚歌劇や宝塚音楽学校に代表されるように独特のシステムを持ち、それ自体が一つのカルチャーでもある。

   今回は作品全体の一部に触れるにとどめたが、「かげきしょうじょ!!」「レヴュースタァライト」それぞれの作風と演劇文化のかかわりをじっくり考察してみる楽しみ方もあるだろう。

(J-CASTニュース編集部 大宮高史)

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