サンバじゃないのに「マツケンサンバ」 歌謡曲の「謎タイトル」なぜ定着?その歴史を調べた
2021.09.26 08:00
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「日本人とサンバ」その歴史をさかのぼる...
「マツケンサンバ」に限らず、日本の歌謡界で「サンバ」の定義が曖昧なままで推移した理由はどこにあるのか、歌謡曲史から調べてみる。
「日本の流行音楽界では、戦前にはタンゴを、戦後はマンボやルンバ、チャチャチャといったラテン音楽が輸入されてきました」と話すのは、当時の歴史に詳しいレコード収集家でライターのとみさわ昭仁さん。
「1950年代から60年代にかけて歌謡界では『ニューリズム』と銘打って新しいリズムの音楽を模索してきた流れがあります。その中のひとつにサンバもありました。また、1960年代中盤から世界中でボサノバブームが起こり、その牽引役のひとりでもあったセルジオ・メンデスが日本でも大変な人気を博したことも影響しているでしょう。
また1960年に映画『黒いオルフェ』が日本で公開されますが、ブラジルのリオデジャネイロを舞台としたもので、劇中にはリオのカーニバルが登場します。この作品によってサンバカーニバルを知った日本人は多いと思います」
ところが、当時からサンバの定義が曖昧に理解されていたようだ。ハシノさんも
「『サンバ』を名乗る歌謡曲で最古のものは私が知る限りでは1953年の美空ひばりさんの 『春のサンバ』ではないかと思いますが、この曲も音楽的にはサンバとは言えないです。
その後、60年代にはニューリズムとしてボサノバが紹介され、一時的にサンバ〜ボサノバのテイストが入った歌謡曲が流行りましたが、サンバ以外のたとえばマンボやツイストといったリズムの名前がついた歌謡曲は基本的にその音楽の特徴を備えていますが、サンバだけは違っているようです」
と考える。
なぜジャンルの混同が生じたか、考えられるのは「黒いオルフェ」にも登場するリオのカーニバルの視覚的インパクトだ。
とみさわさんは「この映画で使われている音楽はボサノバであってサンバではないのですが、音楽的にその境界は曖昧なため、日本では双方を一緒くたにしている現象が多々見られます」と指摘する。しかも「黒いオルフェ」にはサンバを使ったカーニバルの場面もあるからややこしい。