2022年 5月 22日 (日)

絶版本の中身を勝手に空想 「作品への冒涜」SFマガジン企画に批判、編集部が中止決定

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   早川書房が発行する雑誌「SFマガジン」に掲載予定だった、絶版となり入手困難となった本を想像で特集する企画が中止となった。企画したSF作家・樋口恭介さんらがツイッターで発表し、関係者に謝罪した。

   企画をめぐっては、絶版となった本の著者たちから批判的な声が寄せられていた。

   J-CASTニュースは2021年12月6日、樋口さんに企画を依頼した「SFマガジン」の塩澤快浩前編集長に、中止の理由などを取材した。

  • 企画の中止を伝える樋口恭介さんのツイート
    企画の中止を伝える樋口恭介さんのツイート
  • 企画の中止を伝える樋口恭介さんのツイート

「加害性に対して無自覚でした」

   中止となったのは、「読みたくても高騰していてなかなか読めない幻の絶版本を、読んだことのない人が、タイトルとあらすじと、それから読んだことのある人からのぼんやりとした噂話だけで想像しながら書いてみた特集」という企画だ。

   12月2日、樋口さんは編集部と相談し、告知していた企画を中止すると発表した。複数人から不快感を示す声が寄せられており、特に「当事者である絶版本の著者の方からの言葉」を重く受け止めたとした。

「私は加害性に対して無自覚でした。これはひとえに私の未熟さ・認識不足に起因するものです。実在する具体的な個人としての被害者の方への配慮、その存在、その感情に対する想像力が足りておりませんでした。申し訳ありません」

   企画の中止を伝える一連のツイートを受け、「作品に対する冒涜以外の何物でもない」、「出版に関わっている人達がやる企画ではない」などと批判する声が広がった。一方で「面白そうだったのに残念」という声も寄せられた。

「版元として配慮が足りなかったと判断」

   企画した樋口さんは、早川書房の社員ではない。早川書房の実施する「第5回ハヤカワSFコンテスト」を長篇「構造素子」で受賞してデビューした作家だ。

   なぜ樋口さんがSFマガジンでこの企画を進めることになったのか。取材に応じたSFマガジン前編集長の塩澤さんは、経緯をこう説明する。

   SFマガジン2021年6月号に、樋口さんが監修した「異常論文特集」を掲載した。架空の論文形式の短篇を集めた特集で、SF作家・柴田勝家さんの作品にインスパイアされた樋口さんが、同様の作品を読みたいという趣旨のツイートしたことをきっかけに企画された。

   この特集は読者から好評で、増刷につながった。これを受けて塩澤さんは、樋口さんに第2弾の特集企画を依頼。樋口さんは今回の企画を打ち出した。塩澤さんは、「既存のタイトルから内容を想像する短篇、という切り口に面白さを感じた」として、この企画を承認したという。

   塩澤さんは2021年12月号をもって編集長職を退いたが、この企画は新編集長の溝ロカ丸さんに引き継がれた。

個人アカウントの発言を見直し

   しかし12月2日、編集部で中止を決断した。

「当特集を予定していることを樋口氏が自身のツイッターアカウントで告知したところ、絶版書籍の著者や読者の方などから不快感が示されました。絶版の書籍が生まれている状況に対して、版元として配慮が足りなかったと判断し、企画の中止を塩澤個人のアカウントで発表、謝罪しました」

   今回の企画は、異常論文特集同様に関係者らのツイッターでのやり取りによって進められた。塩澤さんによれば、これらのアカウントは本人のもので間違いないが、早川書房やSFマガジン公認のものではなく、「良識の範囲内で個人としての運用が認められていた」という。今後は再発防止に努めていくとする。

「個人アカウントでの発言とはいえ、常に作家や読者の方々への配慮を怠らないよう、自らもふくめ社員教育を徹底、真摯な雑誌・書籍作りを心掛けていきます。あらためて作家や読者の方々にお詫びいたします。申し訳ありませんでした」
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