昭和時代に登場し、百貨店で人気を博した「回るお菓子売り場」がまたひとつ引退する――。大手百貨店「松坂屋静岡店」のツイートに、ネット上で惜しむ声が相次いでいる。懐かしの機器はどのように誕生したのか。J-CASTニュースは開発メーカーに聞いた。店の目玉だった「回るお菓子売り場」様々な種類の菓子をのせて回転し続ける大きな円形の陳列什器「回るお菓子売り場」は、昭和時代に登場して以来、百貨店を訪れる人々を魅了してきた。松坂屋静岡店は「大切なお知らせ」として、2022年3月23日をもって同機器を稼働停止することを、2月11日にツイッターで報告した。機器の正式名称は「Gram(グラム)」。1900年創業の菓子メーカー「松風屋」(愛知県名古屋市)が展開しており、同社の和菓子や洋菓子を量り売りで販売する。松坂屋静岡店の投稿にツイッターでは、「めちゃくちゃなつかしい 胸が痛みます」「まだ回ってるんだ!って嬉しかったのに。とうとう...」「か、悲しすぎる 夢が詰まった回るお菓子......」などの声が寄せられている。反響を受けて松坂屋静岡店の販売企画担当者は15日、J-CASTニュースの取材に、「懐かしいと感じる世代、エモいと感じる世代、様々な反響にあらためて驚いています」とした。「地元静岡よりむしろ全国からの注目度が高いと感じます」ともいう。また「回るお菓子売り場」の引退について、「大切にして来ましたので、よく今まで頑張って回り続けてくれたと思うとともに精一杯の感謝の気持ちを込めて見送るつもりでいます」と伝える。機器自体はメンテナンスに伴って交換されているものの、1971年の開店時から2台が設置されていたという。担当者は当時を振り返り、「売り場の中央にあったことからも目玉として設置されたと考えられます」とする。メーカーが明かす開発秘話松風屋の開発本部担当者は17日、開発のきっかけには当時の先代会長・近藤琢三さんが渡仏した際の出来事があるとJ-CASTニュースの取材に伝えた。近藤さんはスーパーで「小さな円形のアイスクリームの販売台」を見かけたという。台は固定式で、周囲を客が移動して購入するといった形式だった。これによって、「販売台自体を回転させて、お客様が止まったままでも色々なお菓子が回ってくる売場にしたら、今までにない面白い売場になるのではないか」と思いつき、「回転機能を持ったお菓子陳列什器」が誕生するに至ったという。企画はデパートに採用され、開発が始まった。機器は1959年、1号店として名古屋の「名鉄百貨店」に設置された。担当者によると、80年ごろの最盛期には約200店舗に展開していたが、現在では32店舗ほどに規模が縮小した。松坂屋静岡店を運営する大丸松坂屋百貨店についても、機器が設置されている店舗は「徐々に減っております」。残るは「鳥取大丸店」「高知大丸店」の2店舗だという。今後の稼働停止に関する予定は回答を控えた。同機器が減少傾向にあることは「残念と考えております」としながら、「好きなお菓子を好きなだけ購入出来るGramのスタイルは今の時代にもマッチしていると考え、これからもニーズに応じて変化・進化を果たして行きたいと思っています」と担当者は意気込む。また利用者に向けて下記のように伝えた。「これまでの長い間続けてこられたのは、多くのお客様のご支援・ご愛好のおかげだと考えております。これからもGramのコンセプトである、お客様に好きなお菓子を『計る』楽しさと『選ぶ』楽しさを提供できるよう、より一層努力していきたいと考えおります」
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