2024年 5月 5日 (日)

安田純平氏「見せしめ的にやったのでは」「死ぬまで制限される可能性」 旅券発給拒否で政府猛批判

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   3年4か月にわたってシリアの武装勢力に拘束され、2018年に帰国したフリージャーナリストの安田純平さん(49)が23年8月1日、東京・丸の内の日本外国特派員協会で記者会見した。

   安田さんは帰国後に旅券(パスポート)の発給を拒否されており、拒否は違憲だとして国を提訴。拒否は「見せしめ的にやったのではないか」などと訴えた。

  • 日本外国特派員協会で記者会見するフリージャーナリストの安田純平さん
    日本外国特派員協会で記者会見するフリージャーナリストの安田純平さん
  • 記者の質問に応じる安田純平さん。会見場は閑散としていた
    記者の質問に応じる安田純平さん。会見場は閑散としていた
  • 日本外国特派員協会で記者会見するフリージャーナリストの安田純平さん
  • 記者の質問に応じる安田純平さん。会見場は閑散としていた

旅券法が「ジャーナリストの取材を妨害する手段として、非常に便利に使われている」

   安田さんは拘束時に旅券を奪われたため、新たに発行された「帰国のための渡航書」で帰国。帰国後の19年1月に旅券発給を申請したところ、外務省は7月に旅券法第13条を根拠に発給を拒否した。

   旅券法第13条では、「一般旅券の発給又は渡航先の追加をしないことができる」要件のひとつとして、「渡航先に施行されている法規によりその国に入ることを認められない者」をうたっている。外務省は、安田さんが18年10月24日、帰国する際の経由地だったトルコから5年間の入国禁止措置を受けたと主張。この点を根拠に発給を拒否している。

   安田さんは20年1月、発給拒否の取り消しを求めて、国を相手取って提訴。代理人の岩井信弁護士によると、大きく(1)旅券法違反の事実がない(2)旅券法の条項自体が憲法違反(3)仮に条項自体が違憲でなくても、今回の経緯で旅券発給を拒否するのは違憲(4)外相は裁量権を逸脱して恣意的で違法な処分をしている――の4つを主張。10月6日に最終準備書面を提出して結審する予定で、判決はその3~4か月後を見込んでいる。

   安田さん側は、帰国時にトルコ政府から強制退去や入国禁止通告された事実はないと主張。外務省が主張する入国禁止命令は後付けの「自作自演」だったと反論している。

   ロシア外務省は22年5月、岸田文雄首相ら日本人63人を入国禁止することを発表している。このように、日本人がある国から入国禁止になること自体は珍しくなく、入国禁止を根拠に安田さんだけ発給を拒否されるのは不当だとも訴えている。安田さんは

「大きくニュースになった人物なので、はっきり言って見せしめ的にやったのではないか」

とみている。旅券法第13条を念頭に「ジャーナリストの取材を妨害する手段として、非常に便利に使われている法律なのではないか」とも話した。

国外取材できず「40代後半の5年間を奪われたのは、取り返しのつかない大きな機会損失」

   仮に発給された場合「またシリアに行きたいか」という質問には、「非常に微妙な質問。『どこに行きたいか』を見て発給するかしないか、という話をおそらく(外務省は)する」。紛争地に行きたいと明言することは困難な状況だとして、シリアについては

「ビザを取って政府側の地域に行くということは他の旅行者もやっているので、少なくとも、それはしたい」

と話した。

   外務省の主張によると、トルコによる入国禁止期間は23年10月に終わるため、その後は旅券が発給される可能性もある。安田さんは、その後も渡航先が制限された旅券しか発給されない可能性があるとみている。その理由を

「日本政府というのが、移動の自由が、人間が基本的に持っている基本的人権だという認識がない。あくまでも外務大臣が裁量で認めた人間にだけ、認めた範囲で海外渡航させてやる、というのが日本政府の認識。その認識が変わらない限りは、死ぬまで制限され続ける可能性がある」

と説明した。入国禁止期間が終わっても13条1項の合憲性を問うために、22年12月には国家賠償訴訟も提起。請求額は550万円。安田さんは記者会見後に改めて取材に応じ、

「40代後半の5年間を奪われたのは、取り返しのつかない大きな機会損失」

だと訴えた。

   外相会見でも、この問題が提起されたことがある。提訴から8か月が経過した20年9月のことで、茂木敏充外相(当時)は

「係争中の案件で、外務省としてコメントは差し控えたい」

と答えた。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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