「ホワイト企業は福利厚生が充実」 就活生の認識に採用担当者「古すぎる」とバッサリのわけ

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   2024年卒から26年卒の就活生を対象にした調査によると、就活生が「ホワイト企業」と思う特徴として最も多かったのは「福利厚生が充実している」で75.7%を占めた。

   2位の「年間休日数が多い」(62.2%)や「定時に帰れる・残業時間が少ない」(61.3%)を10ポイント以上も引き離すダントツの1位となっているが、社会人の先輩からすると「危うい考え方」にも見えるようだ。

  • 気持ちよく働ける職場がいいに決まってる
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  • 就活生が考えるホワイト企業の特徴(「就活の教科書」調査より)
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「会社にとっておまけみたいなもの」

   この調査は、新卒大学生向けの就活情報サイト「就活の教科書」を運営するSynergy Career(大阪市)が2023年12月26日~24年1月7日に実施し、公式LINEの登録者から111人の回答を得たもの。ホワイト企業の特徴には、上記のほか「有給取得率が高い」(59.5%)や「勤続年数が長い・離職率が低い」(54.1%)といった理由も上位に入った。 しかし、上場企業で採用担当も行っている男性マネジャーAさんは「こんな理由で入社企業を選ぶのは危うすぎる」と漏らす。

「福利厚生は、会社にとっておまけみたいなものですから、いつでも簡単にやめることができます。そんなものに惑わされて就職先を決めるのはナンセンス。こんなこと誰が教えたのか知りませんが、昭和じゃないんですから感覚が古すぎますよ」

   福利厚生には、法律で決められた労働・社会保険などの「法定福利」と、法律で決められていない「法定外福利」がある。前者の福利厚生がない会社は違法なので、就活生が想定しているのは後者の「法定外福利」と考えられる。

   「法定外福利」は、例えば住宅手当や扶養手当、配偶者手当、食費補助や慶弔金といったものだ。会社に対する社員の帰属意識を高めるためなどに設けられていることが多いが、会社が任意で設けていることから任意で廃止することも可能だ。

   手当類の廃止も「就業規則の不利益変更」になり得るので、労働者に周知するなどの手続きは必要だが、廃止は比較的しやすい流れになっている。それはパート労働法の改正で「同一労働同一賃金」が2021年4月に施行されたからだ。

「法定外福利は非正規雇用と差をつけるために、仕事とは関係のない属人的な要素に対し『正社員の特権』として設けてきた会社が多いのですが、制度をシンプルにして雇用形態にかかわらない『公正な待遇』を確保するために、手当を見直す会社が増えているのです」

離職率の低さは「辞めるに辞められない」ためかも

   またAさんによると、法定外福利は社会人経験のない就活生の目を引くようなものもあるが、社会人になると「大した価値に感じられない場合も少なくない」という。

「例えば『記念日休暇』と聞くと、学生は『この会社は社員を大切にしてくれそう!』なんて思うかもしれません。でも、社会人ともなれば『記念日休暇』なんて使わなくても、黙って有給休暇を取ればいいと思うものです」

   Aさんがもうひとつ「危うい」と感じるホワイト企業の特徴は「勤続年数が長い・離職率が低い」で、辞める人が少ない方がいい会社という考え方も古すぎるという。

「辞める人が少ない会社は中途入社も少ない場合が多いのですが、これだけ世の中の変化が激しいのに生え抜きの人材ですべて対応できるなんてありえないじゃないですか。いったん辞めた人が他社で経験を積んで戻ってこられるくらい、雇用がある程度流動化している会社の方が、健全に成長していけるんじゃないですかね」

   離職率の低すぎる会社は、つぶしの利かない社内業務で労働市場における価値を高められず「辞めるに辞められない人になっているのかもしれない」。それではAさんから見た「ホワイト企業の特徴」とはどういうものだろうか。

「社会人になれば、知名度よりも『会社の業績が伸びていること』が重要だと分かりますよ。そのうえで、どんな業界のどんなビジネスモデルで儲かっているのか知ること。すぐれたビジネスモデルの会社は、無理な長時間労働をする必要もなく、給料も安定的に増えていくし、そこで働く経験は後々の糧になる。正直、社会人経験の乏しい就活生の『自己分析』なんかより『企業研究』の方が遥かに大事なんです」

   企業研究の方法は「有価証券報告書や決算説明会資料を見ること」。自分が受けたい会社が非上場企業でも、同じ業界の上場企業を例にすればビジネスモデルの研究はできる。

   研究を基に感じた疑問を面接で質問すれば「この学生は違うな」と高評価に結びつきやすいという。事業や仕事自体に関心の高い就活生は少ないからだ。

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