2024年 5月 21日 (火)

2024年、女性は働きやすくなるのか? 「なると思う」女性4割 さらなる前進への決め手は「家周りの仕事の負担減」

   女性活躍推進法が2016年4月に施行されてから8年あまり。女性は働きやすくなったのだろうか。

   働く主婦・主夫層のホンネ調査機関「しゅふJOB総研」(東京都新宿区)が2024年1月17日に発表した「2024年予測 女性は働きやすくなるのか」という調査によると、「働きやすくなると思う」という女性が4割を超えた。

   一方で、2023年は働きやすくなった実感がないという人も7割を超えた。女性たちの「働きやすさ」の現在地はどこか。専門家に聞いた。

  • 女性は働きやすくなったか(写真はイメージ)
    女性は働きやすくなったか(写真はイメージ)
  • (図表1)前年より「女性が働きやすくなった」という実感の有無:直近の3年間比較(しゅふJOB総研作成)
    (図表1)前年より「女性が働きやすくなった」という実感の有無:直近の3年間比較(しゅふJOB総研作成)
  • (図表2)2024年予測「女性が働きやすくなる」と思うか?(しゅふJOB総研作成)
    (図表2)2024年予測「女性が働きやすくなる」と思うか?(しゅふJOB総研作成)
  • (図表3)2024年は女性が働きやすくなると思うか?:2023年の実感の有無と比較(しゅふJOB総研作成)
    (図表3)2024年は女性が働きやすくなると思うか?:2023年の実感の有無と比較(しゅふJOB総研作成)
  • 女性は働きやすくなったか(写真はイメージ)
  • (図表1)前年より「女性が働きやすくなった」という実感の有無:直近の3年間比較(しゅふJOB総研作成)
  • (図表2)2024年予測「女性が働きやすくなる」と思うか?(しゅふJOB総研作成)
  • (図表3)2024年は女性が働きやすくなると思うか?:2023年の実感の有無と比較(しゅふJOB総研作成)

「出産しても、社会と断絶されることなく働き続けたい」

   しゅふJOB総研の調査(2023年11月15日~22日)は、就労意欲がある主婦層587人が対象となっている。

   まず、2023年を振り返り、「女性が働きやすくなった実感」があるかを聞くと、「ある」と答えたのは3割以下(29.6%)で、「ない」が7割以上(70.4%)だった。

   これを直近の3年間で比較すると、「ある」と答えた女性は2021年には22.1%だったから、3年間に「女性が働きやすくなった」と感じる人が少しずつ増えている【図表1】。

   また、2024年を予測して「女性が働きやすくなると思うか」を聞くと、「思う」が43.8%、「思わない」が56.2%と、ネガティブな見方の人のほうが多かった【図表2】。

   ただし、この質問も直近の3年間を比較すると、「前年より働きやすくなると思う」という人が、2022年の40.2%から2024年の43.8%へと、徐々にではあるが増えている結果が出た。

   興味深いのは、2024年予測の「働きやすくなると思うか」という質問の結果だ。というのも、2023年に働きやすくなった「実感がある・なし」別に比較すると、大きな違いが出ているのだ。

   すなわち、「働きやすくなる」と答えた人は、「実感がある」人では72.4%だったのに対し、「実感がない」人では31.7%だけだった【図表3】。

   もっとも、フリーコメントをみると、「2024年は女性が働きやすくなる」というポジティブ思考の意見はほとんどなく、目についたのは次の1つだけ。

「家庭に軸を置きながら、働くことを認めてくれる社会になってきていると思う。私も今、完全在宅でシステム開発をやらせてもらっているが、すごく働きやすいです。こういう仕事を許してくれる会社が増えれば安心です」(40代:フリー/自営業)

   これに対して、大半がネガティブ思考の意見ばかりだった。

「年齢と性差別。特に年齢によって職種が選べない。清掃や警備しかないとか」(50代:契約社員)
「本当は出産しても社会と断絶されることなく働き続けたいです。正直、家庭内のケアと稼ぎ手の両立は無理ゲーだと思いますし、みんなすり減りながら頑張っています」(30代:今は働いていない)
「仕事も家事も育児もバリバリ1人でこなせる女性は、ごく一部であって、夫や親や外注に頼ったうえで全てこなせている人、何にも頼れず仕事を絞るか、仕事を絞らずに子どもや自分に負担をかけ続けるか、という選択肢しかない人もいる」(40代:派遣社員)
「保育所に入れない⇒職が決まらない⇒保育所に入れない。無限ループなのですが...」(30代:フリー/自営業)
「企業は、名ばかりの女性管理職を増やしているが、呼称ばかりで、機能していない管理職も多く、男性管理職の負担が重くなっていることを問題視してほしい」(60代:今は働いていない)
「もう少し在宅の仕事や短時間でできる仕事が増えてほしい。外でバリバリに働ける人もいるが、介護などで動けない家庭もある。フルタイムばかり多すぎて仕事ができない」(40代:今は働いていない)
「時短正社員の仕事がほとんどない。リモートワーク可能な仕事が激減していて選択肢が少ない。これらのことから、女性にとって豊富な選択肢の中から仕事を選べる環境ではないと考えている」(40代:フリー/自営業)
「日本は優秀な女性が多く家庭内で生活しています。すごく頑張らないと仕事と家庭を両立できない社会ではなく、家庭を大事にしながらも気楽に働ける社会になってほしい」(50代:今は働いていない)

   こういった意見が相次いだ。

働きやすくなった人と、そうでない人との間で二極化

   J-CASTニュースBiz編集部は、研究顧問として同調査を行い、雇用労働問題に詳しいワークスタイル研究家の川上敬太郎さんに話を聞いた。

――2023年を振り返り、「女性が働きやすくなった実感」が「ない」という人が直近の3年間では減っていますが、それでも7割もいるという現実をどう見ますか。
前進しているのか、足踏み状態なのか。もっと前に進むスピードをあげられないものでしょうか。

川上敬太郎さん 女性活躍推進がこれだけ叫ばれてきた中で、女性が働きやすくなった実感が「ない」人が7割もいるというのはとても残念です。それでもジワジワとですが、「ある」の比率が上がってきているということは、前進はしているのではないでしょうか。

ただ、前進するスピードが上がらないのは、政府も企業も頑張っていろいろな施策を打ってはいるものの、残念ながら女性の活躍を阻害する根本的な要因にしっかりとメスを入れられていないということなのかもしれません。

――かたや2024年の予測では、「女性が働きやすくなると思う」人が4割以上います。しかも、2023年を振り返り、「女性が働きやすくなった実感」のある・なしでは大きな開きがあります。
働きやすくなった人と、そうでない人との間で二極化が進んでいるのでしょうか。

川上敬太郎さん 2023年を振り返ると、女性が働きやすくなった実感が「ない」人が7割もいました。ただ、その中にも程度の差があります。おおむね働きやすくはなったものの、まだ少し足りないという人もいれば、働きやすさなんて全くないと感じている人もいるはずです。

それらの「現在地」に対して、世の中は少しずつ女性が働きやすくなる方向へと動いてはいるので、あくまで2023年と比較した場合に2024年は働きやすくなる、と思う人が4割強いるということなのだと思います。

――なるほど。

川上敬太郎さん 一方で、おっしゃる通り二極化は進んでいると感じます。2023年に働きやすくなった実感があった人は、2024年が働きやすくなると回答した比率が7割を超えます。これに対して、2023年に実感がなかった人は約3割に留まります。実感した人のほうが、未来をよりポジティブに受け止められているようです。

微増であっても、女性が働きやすくなるという期待感が増えていること自体はいいことなのだと思います。ただ、大きく増えていないのは、これといった決定的な変化を感じていないことの表れでもあると感じます。

期待感が高まっているのに実感が伴わないままで、期待はずれでガックリすることに疲れてしまい、その反動で未来に期待すら持ちづらくなってしまう......そのようなことにならなければと願います。

女性の悩みが男性の悩みになった時、初めて前進する

――フリーコメントではポジティブな意見がほとんどなく、ネガティブな意見ばかり多いのはなぜでしょうか。

川上敬太郎さん 2023年を振り返って、女性が働きやすくなった実感が「ある」と答えた人が3割近くいますが、だからといって、満足するほど働きやすくなったと感じているとは限りません。

そもそも女性にとって極めて働きにくい環境であったことを考えると、働きにくさが相対的に緩和しただけであって、多くの女性が満足できるほど働きやすい環境には、まだまだ程遠いということなのでしょう。

――さきほど、「女性の活躍を阻害する根本的な要因に、しっかりとメスを入れないと」と述べられましたが、それは何ですか。さらに前に進むためには何が一番大切だと思いますか。

川上敬太郎さん さらに前進するために必要なことはたくさんあります。ここでは、敢えて1つ挙げるとすると、女性にかたよっている家周りの仕事の負担を減らすことです。家事や育児、介護といった仕事の負担が減らないままでは、女性は働けば働くほど、どんどん大変な状況に追い込まれてしまうことになります。

ずっと仕事と家庭の両立に悩んできたのは、ほとんどが女性でした。それが男性の悩みにもなった時に初めて、女性の負担が緩和される一方で、仕事と家庭の両立が働く人すべての悩みになります。

これまでは100%仕事に時間を捧げられる状態が普通だと考えられてきたため、仕事と家庭を両立させる人のほうが特別視されるきらいがありました。しかしそれは逆で、家庭との両立を図りながら働くことのほうが普通だという認識に変える必要があります。

そのうえで仕事にしっかりとコミットし、成果を最大化させていくための職場体制や業務プロセス、人事制度などを再構築する「職場のマネジメント改革」こそが、急務だと思います。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)

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