人気女性ライバーが刺殺される事件が発生した。報道によると容疑者が被害者女性に多額のお金を貸し、返済を要求していた最中だったらしい。お互いに事情はあれど、金銭トラブルから大事へと発展した痛ましい出来事である。
このような事件は今に始まったわけではなく、"頂き女子"や"パパ活"なんて言葉が浸透する以前より起きていたことだ。しかし、近頃は金銭問題がきっかけで夜職女性が顧客から殺害された事件も関係して、人気商売と客(ファン)同士のトラブルが明るみに出始めている。
「消費者金融に行かせたら勝ち」
心に余裕がある人こそ、女性関連の金銭トラブルにあまり遭遇しない。反対に切羽詰まっている人ほど外へ癒しを求めるせいで不毛な関係を築き、"策士"な人間にあっさりとだまされやすい。
実際に夜のお店でも、「無趣味な客ほど指名に繋げやすい」と言われているほど。
非常に言い方は悪いが、無趣味で友達が少ない人間はコミュニティーがとにかく狭い。腹を割って話せる相手はいないけれど、心の寂しさを拭いきれないとお金を払ってでも誰かに会いたい気持ちが芽生える。
最初は夜のお店通いに抵抗を覚えても、周りに止める人がおらず、他にお金の使い道がないと暴走しがちだ。大抵の場合は"行くところまで"行ってしまう。
複雑な金銭トラブルがニュースで取り上げられる以前は、「客を消費者金融に行かせれば勝ち」なんて教えが歓楽街に存在した。恐ろしいテクニックだが、昔は娯楽が極めて少なかったため、骨の髄まで夜のお店にどっぷりと浸かる客があちこちに現れた。マッチングアプリや婚活パーティーのない時代、消費者金融に走ってでも気に入った女性を手に入れたい人が多かったのだろう。
昭和~平成中期まで夜職キャストとして働いていたベテランA嬢は、「自分の客が何人、消費者金融に行ったかは分からないわ」なんてボヤいていた。
彼女は友営(友達営業)と呼ばれるライトな接客が得意だったものの、距離感の近さがセールスポイントだったせいで、「自分でもオトせそうだ」と思い込む指名客が絶えなかったという。ナチュラルに"沼"らせるA嬢もなかなか罪作りな女性だが、消費者金融へ流れる客たちも相当盲目的だったと言えようか。
「人は恋に落ちると冷静な判断ができなくなる」のは、いつの時代も変わらない。
裏引きと呼ばれる金銭トラブル......女性側の心理
来店させてお金を遣ってもらうのではなく、外で客と会って金銭のやり取りを行うことを夜の世界では「裏引き」と呼ぶ。最近はパパ活と裏引きが紙一重として扱われるが、いずれにせよ非公式な稼ぎ方のため、夜職ではタブーとして問題視される行為の一つだ。
刺殺された女性ライバーも容疑者の男性から、投げ銭ではなく直でお金を引っ張った。夜職的な目線で言うと今回の件は、立派な裏引きである。
人気商売では店や配信など"何か1枚"挟まれた状態でない金銭のやり取りは、ほぼ必ずトラブルが発生する。ある歓楽街では、顧客から大金を借りても一向に返さないキャストがいて、怒り心頭の元客が店へ乗り込んだらしい。命を奪われないだけ良かったけれど、男性が真っすぐに立ち向かってくる性格でなければ当該キャストはどうなっていたか分からない。
裏引きする女性は、自分を甘やかしてくれそうなタイプを見極めるのがうまい。"お金を引き出させるまで"の流れを作る能力に長けていて、ある程度の関係を持続させる術を自然と身に着けている。
しかし、全員が全員、後処理までも完璧とまではいかない。"おねだり"を躊躇なくする時点で相手をどこか下に見ているし、最悪の事態までを想定せずに動くから問題が起きる。少し頭が回れば直接的なやり取りがどんなに危険かを、すぐに想像できるからだ。
非常に悲惨な事件が起きたものの、筆者個人の意見としては、もともと演者とファンという一線を引いた関係なのだから、恋愛などピュアな感情をお互いに持たない限り、距離の縮め方を間違えてはならないと思う。
片方は遊び、片方は仕事として振舞う時点で演者とファンはフェアじゃない。そこを履き違えるとズレが生じて取り返しのつかない問題が発生する。金銭の授受など、言語道断だ。
近年のパパ活や夜職、そして配信ブームなどにより、メディアに取り上げられないところでもトラブルは起きている。どうか痛ましい事件が連続しないよう、人気商売に就く側も、応援する側も節度を持った行動をしていただきたい。
【プロフィール】
たかなし亜妖/2016年にセクシー女優デビュー、2018年半ばに引退しゲーム会社に転職。シナリオライターとして文章のイロハを学び、のちにフリーライターとして独立する。現在は業界の裏側や夜職の実態、漫画レビューなど幅広いジャンルのコラムを執筆中。