自動車の世界ではクルマの「クラス分け」「車格」などを表す言葉として「セグメント」を使うことが多い。セグメントとは英語の「segment」で、他動詞であれば「分割する」、名詞であれば「区分」などを意味する。日本では徳大寺有恒氏が広めた自動車販売店に行くと販売員からセグメントという言葉がよく出て来る。この車と同じ格の車は別のメーカーでは何か。他社の車と比較するときに便利な言葉だ。自動車のセグメントは、欧州の調査会社がマーケティングのために発案した分類のようだが、歴史的な経緯はよくわからない。公式には1999年3月、欧州委員会が公表した自動車をめぐる文書の中で、A~FとS、M、Jの九つのセグメントが登場する。欧州委員会は排気量やクルマの全長、価格などでセグメントが決まるとして、Aをミニカー、Bをスモールカー、Cをミディアムカー、Dをラージカー、Eをエグゼクティブカー、Fをラグジュアリーカー、Sをスポーツクーペ、Mを多目的車、Jはオフロード車を含むSUVと区分した。当時、A~Fはハッチバックを含むセダンを中心とする区分だった。日本でセグメントという言葉を使い、一般に広めた先駆者は、自動車評論家の故・徳大寺有恒氏だろう。欧州車に詳しい徳大寺氏は、1990年代から自動車雑誌「NAVI」(二玄社、2010年休刊)などで、この言葉を多用した。セグメントに明確な定義はないが、今日では一般にクルマの全長が目安となる。Aセグメントは全長約3.5m以下、Bセグメントは全長約3.5m超・約3.85m以下、Cセグメントは全長約3.85m超・約4.3m以下、Dセグメントは全長約4.3m超・約4.65m以下、Eセグメントは約4.65m超・約4.9m以下、Fセグメントは約4.9m超と考えられているようだ。中古市場では価格帯で区分する考えもこの定義には諸説あり、全長は長くなる傾向にある。全長とともにクルマの価格でセグメントを区分する考え方も中古車市場などにはあるようだ。Aセグメントは日本の軽自動車やフィアット500、Bセグメントはトヨタヤリス、アクア、ホンダフィット、スズキスイフト、フォルクスワーゲン・ポロ、Cセグメントはトヨタカローラ、プリウス、日産リーフ、フォルクスワーゲン・ゴルフなどが当てはまる。Dセグメントは日産スカイラインなど多くの日本車が当てはまる。現在、主流のSUVやミニバンも欧州式のMやJセグメントではなく、A~Eセグメントで考えた方がわかりやすい。Aならスズキジムニー、Bならトヨタライズ、Cならホンダヴェゼル、Dならトヨタヴォクシー、スバルフォレスター、Eならトヨタアルファードといったところだろう。明確な定義はなく、自動車メディアや中古車市場に慣習的に存在するセグメントは、クルマのナンバーなどでは判別できない。車検証やカタログなどを参考に、その全長から判断するしかないだろう。(ジャーナリスト 岩城諒)
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