ウェブ上で一方的な批判書き込む
ある日、野田さんはウェブ上で、自身が勤務している病院名を検索。目に飛び込んできたのは、その患者と思われる人物からの口コミだった。
「スタッフの応対が不親切だった。事前に予約していたにもかかわらず、かなりの時間待たされた」
「説明も不十分で、質問をしてもはっきりとした回答が得られなかった」
「時間が無駄だった。再度訪れることはない」
現場での暴力に加え、ウェブ上に投稿された口コミもまた、医療従事者の心に深い傷を残す「目に見えない暴力」だと野田さんは話す。
「口コミには、一方的な批判しか書かれていませんでした。現場で何が起きていたのか、スタッフがどれだけ努力したかについては全く触れられていませんでした。それは仕方ないことかもしれませんが、私たちが誠実に積み上げた時間は、たった数行の否定で切り捨てられてしまったんです」
医療現場では、患者に対して「それは困ります」と伝えることさえ難しいそうだ。「患者=弱者」という固定観念が根強く、スタッフは自分の言葉を抑え、ただ耐えるしかないという。
野田さんは、「医療現場ではカスハラへの対策が遅れていると感じています」と吐露。そして、「ハラスメントに対する相談窓口や、患者向けへの啓発活動が必要だと思います」とも訴える。
スタッフを守るための制度や、カスハラを可視化する仕組みが求められている――。そう強調した野田さんは、病院に行く際は、「この人たち(スタッフ)も日々努力していることを心に留めておいてほしい。少しの思いやりが、医療現場を支える力となります」と話した。