ある日、会社に1本の電話がかかってくる。「はい、〇〇百貨店でございます」「〇〇について教えてほしいのですが...」これは公益財団法人・日本電信電話ユーザ協会が毎年主催する「企業電話応対コンテスト」のイメージだ。専門スタッフが「仮のお客さま」として予告なしに電話をかける。通話を録音し、「すぐに電話に出たか」「正しい敬語を使い分けているか」「用件を正しく把握できているか」といったポイントから、5人の専門家が100点満点で採点する。いつ入電するか分からないので企業側は担当を決めておくこともできない。若手社員の半分は電話マナーに自信がない2025年度の参加企業募集は5月から始まり、協会は「ビジネスにおける『電話』の重要性を再認識! 電話応対品質やCSの向上、若手社員の『電話恐怖症』克服にぜひお役立てください」とチラシで呼びかけている。若手社員にはビクビクものかもしれない。IT営業アウトソーシングのBCC株式会社は2025年2月に、入社3年目までの若手社員400人(18~27歳)に「苦手な仕事」について尋ねる調査をした。すると、5割が電話応対をあげた。その理由は「電話のマナーに自信がない」(53.5%)が最も多く、「普段から電話を使う機会がない」(44.6%)も目立った。電話よりチャットアプリやSNSを好むというZ世代の傾向がうかがわれる。電話に失敗はつきものだ。顧客管理システムなどの株式会社オールトゥデイが2024年10月に人材業界の101人に聞くと、電話応対をしたことのある回答者の8割が「失敗した経験がある」と答えた。その内訳は次のとおり(複数回答)。「要件を正確に聞き取れなかった」(62.9%)「相手の名前や会社名を間違えた」(38.6%)「メモを取らずに内容を忘れてしまった」(32.9%)「相手を長く待たせてしまった」(31.4%)「言葉遣いや敬語が不適切だった」(28.6%)「間違った情報を伝えてしまった」(22.9%)「電話を切るタイミングを誤った」(11.4%)など多くの企業が電話応対を新人研修メニューにこうしたなかで電話応対を新人研修メニューに入れる企業は多い。伊藤忠商事やNTTドコモなどの研修に携わってきたアルー株式会社は「Z世代の新入社員の中には、電話そのものがあまり得意ではないと感じている人も多い。苦手意識を払拭し、『やってみたら案外できた』という自信を持ってもらえるようなプログラムに」とアドバイスする。ビジネスコミニュケーションのAICROSS株式会社のサイト「絶対リーチ!SMS」も、「正しい言葉遣いを身につけて自信を持って電話対応に臨もう」と、こんな「電話対応で間違えやすい言葉遣い一覧表」をのせている。【電話対応で間違えやすい言葉遣い一覧表】(一部引用)ミスをおそれる若手社員にとってはストレスのもと。しかし、職場のデジタル化が進んでも電話がビジネスの窓であることに変わりはない。さて、冒頭の「企業電話応対コンテスト」だが、2024年度には計679社が参加し、グランプリにあたる「会長賞」に選ばれたのはSBI証券だった。(ジャーナリスト 橋本聡)
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