児童労働に配慮した原料使う「ブラックサンダー」、製造会社は全商品で取り組み完了 今後の展開は?

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   人気チョコレート菓子「ブラックサンダー」が社会課題に取り組んでいるとSNS上で話題になっている。同商品の原料は、児童労働問題に配慮した「カカオ原料」を使用していると公式サイトで説明されている。この取り組みを称賛する声が相次いだ。

   じつは、製造販売会社の有楽製菓(東京都小平市)は、ブラックサンダーを含めた全てのチョコレート商品でも上記の取り組みを行っている。2024年には、同社が使う全てのカカオ原料を切り替えたと報告している。同社の経営品質部に、経緯や今後の対応など、詳しい話を聞いた。

  • ブラックサンダー(有楽製菓のプレスリリースより)
    ブラックサンダー(有楽製菓のプレスリリースより)
  • 河合辰信社長(有楽製菓のプレスリリースより)
    河合辰信社長(有楽製菓のプレスリリースより)
  • 河合辰信社長と子どもたち(有楽製菓のプレスリリースより)
    河合辰信社長と子どもたち(有楽製菓のプレスリリースより)
  • ブラックサンダー(有楽製菓のプレスリリースより)
  • 河合辰信社長(有楽製菓のプレスリリースより)
  • 河合辰信社長と子どもたち(有楽製菓のプレスリリースより)

予定より1年早く全商品を「スマイルカカオ」に切り替える

   SNS上で話題になったのは2025年8月5日ごろだ。注目を集めたXの投稿は、有楽製菓はカカオ豆の生産国の児童を搾取しない道を選んだため、チョコレートを買うときは同社のブラックサンダーを購入する、という内容だ。

   この投稿は8月7日時点で5万件以上の「いいね!」を集め、「知らなかった」「ますます好きになりました」「賛同します」「そんな企業努力があったとは...」などと絶賛する声が相次いだ。

   有楽製菓の公式サイトによれば、主に西アフリカ諸国で生産される「カカオ豆」は、その生産のために多くの子どもが働いている。この問題を解決するために、児童労働の撤廃に取り組むカカオ原料「スマイルカカオ」への切り替えを行っている。

   同社は、こうした取り組みを「スマイルカカオプロジェクト」と呼んでいる。スマイルカカオの仕組みは、同社が購入するカカオ原料にプレミアム(支援金)を上乗せして購入することでカカオ農園に還元される、というものだ。

   「スマイルカカオプロジェクト」を始動したのは19年。ブラックサンダーのスマイルカカオ率100%を22年に達成した。同社は25年までに全てのチョコレート商品をスマイルカカオに切り替える方針を掲げていたが、目標よりも1年早く達成したという。

プロジェクトを始めた理由は?

   どのような経緯から「スマイルカカオプロジェクト」を始めたのか。有楽製菓の経営品質部の担当者は、同社の河合伴治会長が18年に児童兵についての講演会に参加したことがきっかけだったと説明する。

   この講演会で、河合氏は、チョコレートに使われるカカオ豆にも児童労働の問題があると知った。それまでは「親の手伝いなどはあるだろう」と認識していた。だが、「それが労働といわれるほどのものだとは認識しておりませんでした」。この問題を何とかしたいと感じた河合氏が、社内で検討を始めたのだという。

   プロジェクトを実施しても、製品の値上げをせずにすんでいるという。担当者は、「生産の効率を高める、使用する包材のコスト削減を行ったことで費用を捻出しております」と説明している。

   その後、ブラックサンダーをスマイルカカオへと切り替えた。25年には全てのカカオ原料も切り替えることを掲げていたが、当時はこの目標を達成できるか分からなかったと、担当者は振り返る。しかし、24年に達成。このときの気持ちを次のように語った。

「その高い目標を目標年よりも前倒しで達成できたことは非常にうれしかったです。達成できた背景には多くの企業が前向きに弊社の活動に対する理解、ご協力を頂いたことがございます。ご協力を頂いた企業のみなさまに感謝申し上げたいと思います」

   全てのカカオ原料をスマイルカカオへと切り替えることを達成した現在、同社は児童労働の問題について今後どのように関わっていく予定なのか。

   担当者は、まず児童労働に関する現状に言及。国際労働機関(ILO)の報告では、児童労働は減少傾向にある。だが、持続可能な開発目標(SDGs)が掲げる「2025年までに全ての形態の児童労働を撤廃する」は達成できなかった。

   担当者は、「このような事実を含めて児童労働がまだ発生しているということを多くの方に知って頂き、児童労働を撲滅できるようみなさまに考えて頂くきっかけが作りたいと考えております」と方針を示し、引き続き社会課題の撲滅に向けた活動を行うとしている。

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