「新時代」「とりいちず」「それゆけ!鶏ヤロー!」 激安な「居酒屋第4世代」Z世代を狙うしたたか戦略

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   レモンサワー55円、ハイボール109円、生ビール209円、鶏皮串55円、スパチキ65円......。「居酒屋第4世代」の価格設定だ。なぜこんな値段で商売が成り立つのか。Z世代の消費行動とコロナ禍後のしたたかな経営戦略が見え隠れする。

  • 「居酒屋第4世代」が台頭している(画像はイメージ)
    「居酒屋第4世代」が台頭している(画像はイメージ)
  • それゆけ!鶏ヤロー! 琴似店(鶏ヤロープレスリリースより)
    それゆけ!鶏ヤロー! 琴似店(鶏ヤロープレスリリースより)
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  • それゆけ!鶏ヤロー! 琴似店(鶏ヤロープレスリリースより)

雑誌、テレビが取り上げた

   注目されるきっかけは日経MJの2024年12月の記事だった。酒離れの時代といわれる中、ひときわ若者でにぎわう居酒屋チェーンがあるとして「新時代」「とりいちず」「それゆけ!鶏ヤロー!」を紹介し、「居酒屋第4世代」と定義した。その後、テレビなどで取り上げられ、2025年6月発表の「2025年上期日経MJヒット商品番付」の上位に入っている。

   居酒屋第1世代は1970年代に全国展開した「養老乃瀧」「つぼ八」「村さ来」などの大手居酒屋チェーン店だとされる。1990年代に第2世代として、「白木屋」「和民」「甘太郎」などが多彩なメニューを提供し、より幅広い客層を引き寄せた。第3世代は2000年代に登場し、専門型居酒屋と呼ばれる「鳥貴族」「磯丸水産」「串カツ田中」などが独自のメニューやコンセプトを押し出して成功した。

コロナ禍に追い打ちをかけた物価高

   ところが、業界全体を揺さぶる異変が起こる。新型コロナのパンデミックだ。日本フードサービス協会によると、居酒屋の2020年の売上高は前年比52.3%と半減した。東京商工リサーチが2021年に報告したところでは、大手居酒屋チェーンはコロナ禍前より1000店以上も減った。物価高が追い打ちをかけ、客離れは加速。この逆境から、「第4世代」が台頭する。

   「鶏ヤロー」の客単価は2000円ほど。コストを切り詰めるため、多くの料理は店内で仕込んで調理し、モバイルオーダーで人件費を抑える。コロナ禍前の35店から、2025年に80店を突破、2026年に100店舗をめざしているという。

   経営戦略を反映するのがキャッチフレーズやメニューの売り文句だ。「新時代は日本で初めて、ビールを190円で販売した全国チェーン店です」(新時代)。「生絞りレモンサワー80円(税込み88円)何杯飲んでもこの価格!」(とりいちず)。「限界に挑戦!飲み放題!120分999円」(鶏ヤロー)。

Z世代は酔うためだけでなく楽しむために飲む

   このような経営戦略が狙う客層はコスパに敏感なZ世代である。

   全国大学生活協同組合連合会が2024年10~11月に1万1590人の大学生から回答を得た調査によると、64.3%が「外食費を含む食費」を節約したいと考えている。Z世代は酔うためだけでなく、楽しむために飲む。低アルコールやノンアルコール、「映える」ドリンクの需要にもそれが反映する。1杯55円のレモンサワーは節約志向だけでなく、何杯でも気軽に注文できるという「気楽さ」を提供している。

   ちなみに、サラリーマンなど社会人の飲み代は「1か月平均6002円」ほどらしい。事業資金融資の「大黒屋」が20~50代の1000人から調査し、2024年9月に発表している。

   居酒屋は、外国人観光客の視線も集める「日本の食文化」だ。時代の波にもまれ、浮沈をくりかえしてきた。「第4世代」も原材料費の高騰という逆風に直面する。価格競争の一過性のトレンドなのか、それとも食文化の担い手に育つのか。真価が問われるのはこれからだ。

(ジャーナリスト 橋本聡)

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