80回目の終戦の日にあたる2025年8月15日、東京・北の丸公園の日本武道館で政府主催の全国戦没者追悼式が行われた。戦後80年の節目の「首相談話」の発表を見送った石破茂首相は式辞の中で、「あの戦争の反省と教訓を、今改めて深く胸に刻まねばなりません」などと述べた。
例年、首相が天皇陛下の「おことば」に先だって述べてきた式辞の内容は、多くを菅義偉元首相、安倍晋三元首相時代のものを踏襲。安倍氏が提唱した「積極的平和主義」という言葉が用いられてきたが、24年の岸田文雄元首相の式辞では姿を消し、25年の石破茂首相の式辞でも引き続き登場しなかった。
岸田氏の「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序」は姿消す
石破氏は「首相談話」の発表を見送り、10年ごと閣議決定されてきた談話を引き継ぐ。ただ、式典の式辞では「石破カラー」がにじんだ。終戦からの年月の経過を言及するくだりは
「今では戦争を知らない世代が大多数となりました。戦争の惨禍を決して繰り返さない。進む道を二度と間違えない。あの戦争の反省と教訓を、今改めて深く胸に刻まねばなりません」
の一節が加わった。
天皇陛下「戦中・戦後の苦難を今後とも語り継ぎ」
ただ、今後の取り組みについては、岸田氏が
「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化を進め、『人間の尊厳』を中心に据えながら」
と表現していた部分が「分断を排して寛容を鼓し」になり、「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序」というフレーズが姿を消した。
天皇陛下の「おことば」には
「戦中・戦後の苦難を今後とも語り継ぎ」
の一節が加わった。
式典には天皇皇后両陛下、石破氏、98歳から3歳までの遺族ら約3830人が参列し、日中戦争と第2次世界大戦で犠牲になった約310万人を追悼した。
(J-CASTニュース編集委員 兼 副編集長 工藤博司)