阪神優勝のセ・リーグ、2位と3位は「借金」の可能性 それでもクライマックスシリーズやる意味あるの?

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   プロ野球セ・リーグは、阪神タイガースが2025年9月7日、両リーグ史上最速で優勝した。一方、2位以下のチームの成績は勝率5割未満という前代未聞の事態になっている。

   このままいくと、セ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)にはシーズン負け越しのチームが2チーム出場することになり、昨年の横浜DeNAベイスターズのような3位からの「下剋上」が起これば、勝率5割以下のチームが日本一になる可能性がある。

   こうした状況から、ファンの間でもCSの是非が問われている。

  • 阪神タイガースを指揮した藤川球児監督(写真:Imagn/ロイター/アフロ)
    阪神タイガースを指揮した藤川球児監督(写真:Imagn/ロイター/アフロ)
  • 読売ジャイアンツの本拠地、東京ドーム
    読売ジャイアンツの本拠地、東京ドーム
  • 阪神タイガースを指揮した藤川球児監督(写真:Imagn/ロイター/アフロ)
  • 読売ジャイアンツの本拠地、東京ドーム

勝率5割以下でCS出場したのは7チーム

   CSは、2004年にパ・リーグで先行導入されたプレーオフ制度が源流。当時、観客動員減少への危機感から、シーズン後半に上位3チームによる「短期決戦」を設け、日本シリーズ出場チームを決める制度だった。

   1位はファイナルステージへ自動進出し、2位・3位の勝者が"挑戦"するこのシステムは興行的に成功し、2007年からセ・リーグでも「クライマックスシリーズ」として導入されることとなった。

   以降、CSによる観客動員や放映収入は年々向上。さらに、リーグ優勝が決まった後もファンの興味を持続できるというメリットがあり、制度はすっかり定着した。

   ただし、導入初期から短期決戦が長期の勝負を覆す可能性を指摘する声は少なくなかった。

   なお、過去に勝率5割以下でCSに出場したのは、シーズン3位で終えた以下の7チーム。

2009年=東京ヤクルトスワローズ:勝率.497
2013年=広島東洋カープ:勝率.489
2015年=阪神タイガース:勝率.496
2016年=横浜DeNAベイスターズ:勝率.493
2018年=読売ジャイアンツ:勝率.486
2021年=読売ジャイアンツ:勝率.496
2022年=阪神タイガース:勝率.489

   これに加え、2005年に西武ライオンズが勝率.493でプレーオフに出場しているが、これらすべてのチームが日本シリーズに出場することはできなかった。

貯金わずか2で「日本一」が、CSの議論を沸騰させた

   ただし、今年の場合は負け越しチームが2チーム出る可能性がある点が問題である。そのぶん、負け越しチームが日本一になる単純確率が上がるからだ。

   とはいえ現行のCS制度では、シーズン2位(ホーム)と3位で2勝したチームが勝ち上がり、1位(ホーム)と対戦して4勝したチームが日本シリーズに出場する。ただし1位には1勝のアドバンテージがあるため、「下剋上」は起こりづらい。

   CS制度以降、2位以下のチームがクライマックスシリーズを勝ち上がったのは7回しかない。

2007年=セ:中日ドラゴンズ(2位)※
2010年=パ:千葉ロッテマリーンズ(3位)※
2014年=セ:阪神タイガース(2位)
2017年=セ:横浜DeNAベイスターズ(3位)
2018年=パ:福岡ソフトバンクホークス(2位)※
2019年=パ:福岡ソフトバンクホークス(2位)※
2024年=セ:横浜DeNAベイスターズ(3位)※

   このうち5チーム(※印)が日本シリーズを制している(ちなみに、2005年のパ・リーグプレーオフを勝った2位の千葉ロッテも日本シリーズで優勝)。

   さらに、昨年のDeNAはシーズン71勝69敗3分、勝率.507で「史上最低勝率での日本一」という記録を打ち立てた。「レギュラーシーズンの意味はどうなるのか」という議論が、再び沸騰しつつあったのだ。

興行としてのプロ野球か、勝負としてのプロ野球か

   こうした現行のCS制度への疑問については、元プロ野球選手出身の解説者たちも口を揃える。

   巨人OBでDeNAの監督を務めた中畑清氏も「まず勝率5割に届かないチームはCS出場の権利なしとすればいい」(『スポニチアネックス』2025年9月2日)と述べ、プロ野球OBから同様の意見が多く出ている。

   一方、「CSがなくなると、かつてのように夏場過ぎには消化試合になるチームが出てくる恐れがある。それで野球に対するメディアの扱いが減ると、野球界の衰退につながるのではないかと危惧しています」(『スポーツナビ』2022年1月25日)と述べるロッテOBの里崎智也氏のように、CSの興行価値を評価する声もある。

   加えて「3位のチームが勝率5割以下だった場合や、一定のゲーム差以上開いた場合には、ファーストステージでも2位のチームに何らかのアドバンテージをつけていいと思います」(同前)とも述べている。

   たしかに、近年のプロ野球観客数は安定して増加傾向にあり、2024年に過去最多を更新。これもCSが存在することで、10月までシーズンを楽しめるようになったことが大きな要因であることは間違いない。

   一方でプロ野球は、一流選手たちが繰り広げる「勝負」を見るための場でもある。

   たとえば、巨人OBでコーチも務めた篠塚和典氏のように、「日本シリーズは以前のようにリーグ優勝チーム同士の戦いとし、日本シリーズとは別にカップ戦などを開催することもひとつの手」(『Web スポルティーバ』2024年12月4日)という一歩踏み込んだ案を提示している解説者もいる。

   ただし、里崎氏と同様「プロ野球は興行ですし、経済効果などいろいろなメリットもあるので簡単に解決できる問題ではありませんが」(同前)という大前提も述べている。

   興行としてのプロ野球か、勝負としてのプロ野球か。いずれにしても、このままシーズンが進めば、オフに再び議論が巻き起こることになりそうだ。

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