石破茂総理総裁の後任を選ぶ総裁選挙について、自民党の総裁選挙管理委員会は2025年9月22日に告示し、国会議員の投票は10月4日に行うことを決めた。
24年9月の総裁選を振り返っておこう。石破氏ら9人が立候補したが、事実上、石破氏、高市早苗氏、小泉進次郎氏の戦いだった。第1回投票では、党員票で石破氏108、高市氏109、小泉氏61。議員票で石破氏46、高市氏72、小泉氏75。全党員票は368、全議員票は368。この三氏で全党員票の72%、全議員票の52%を占める。
石破氏が抜けたので、当然、高市氏と小泉氏の争いと見るのが自然だ。24年の総裁選では、決戦投票の都道府県投票で石破氏26、高市氏21。議員票で石破氏189、高市氏173。その結果石破氏215、高市氏194で、石破氏が総裁になった。
石破氏が普通に辞めていれば「石破票」は小泉氏に行ったはず
これを分析すると、石破、高市両氏ともに党員票ではいい勝負をしていたが、議員票で、第1回で3位の小泉氏の票と、その他4割程度が流れたと考えるとスッキリする。
今回の総裁選は、1年前のものから石破茂が抜けたものだ。石破氏の票がどこに流れるのかがポイントだ。
もし石破氏が普通に総理をやって辞めたなら、党員票でも議員票でも石破票が小泉氏に流れて小泉氏が圧勝するだろう。しかし、いくつかの状況変化がある。まず、24年の総裁選を見たら、小泉氏は内外政に経験不足で、数々の迷言をしてしまった。このため、序盤では圧勝ムードだったが、あっという間に萎んでしまった。
この1年でどれだけ成長したかがポイントだが、内政では政府備蓄米を見ていると、都議選や参院選には刺さらなかった。筆者には、この1年であまり成長していないように見える。また、外交ではトランプ大統領と渡り合わなければならない。小泉氏の経験不足は否めない。
高市氏の方が「大きく変わった感」の可能性
さらに、自民党は出直し的解党が求められるが、小泉氏は石破氏と近かったために、石破路線を引き摺るように思える。高市氏のほうが岸田・石破政権の政策から大きく転換する。積極財政論では大きな転換だし、保守的な政策で自民党が失った人を取り戻せる期待もある。玉木国民民主と組むこともあり得るし、こうした意味では大きく変わった感は出る可能性がある。
実際、株式市場は石破氏退任で大きく値を上げた。その多くは、「高市銘柄」といわれるもののようだ。高市氏は、量子コンピュータ、宇宙ビジネス、核融合などの新技術にも熱心であり、何より国土強靭化ではこれまで公明党があまり熱心でなかったのを打破できる可能性がある。
こうした状況変化を読むのは党員のほうがはやい。自民党が変わるために、党員はどう判断するのか。議員はそれに追随するので、党員判断が重要だ。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長 1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。21年に辞職。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。