坂口志文大阪大特任教授のノーベル生理学・医学賞受賞を、7年前に予言していたコメンテーターがいた。あの玉川徹さんだ。玉川さんは2018年11月放送の「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系)で、坂口教授の研究を「免疫ブレーキ役発見」と紹介し、「世界中で非常に注目されています。ノーベル賞いくんじゃないかと、僕は思っているくらいの方なんです」と研究室まで取材に出かけて取材していた。基礎研究の予算は減り続け、中国の3分の1以下まさに玉川さんのスクープなのに、肝心の授賞発表翌日の2025年10月7日の放送にいない! いったいどういうことか。司会の羽鳥慎一アナは「玉川さんは今週夏休み...。どういうことなんでしょう」と間の悪さを残念がり、コメンテーターの菊間千乃さんも「ねえ~」と苦笑した。坂口教授の研究は今後、リウマチや子どもの1型糖尿病、がん、花粉症・喘息などの治療に実用化されていくことになるが、坂口教授が免疫ブレーキ役を「制御性T細胞」と命名して、論文を発表したのは30年も前だ。ようやく評価されたということだが、こうしたすぐに成果が出ない基礎研究の研究費は近年どんどん減っていて、「羽鳥パネル」でも取り上げた。基礎研究の年間研究費(2020年)はアメリカ81.1兆円、中国66.1兆円に対して、日本は18.1兆円でしかないという。斎藤幸平さん「高市さんなんかにも考えていただきたい」コメンテーターの斎藤幸平さん(東京大准教授)は、「(科学研究も)目先で成果が出そうなものに飛びつく、はやりに飛びつく。だけど、研究のインパクトが30年後に評価されるものは、実はもっと違うもの。つまり、それは既存のものを覆す(研究です)。これはビッグピクチャー(長期的に大局を見る視点)が必要だし、そういうものを国がどう支援していくかということを、高市さんなんかにも考えていただきたいなと、私も研究者として強く思います」と語った。研究費不足から、注目度の高い論文数ランキングでも、日本はこの20年間で4位からに13位に下がった。もはや科学立国と呼べなくなっているというわけだ。もしこの日の番組に玉川さんが出演していたら、「国はもっと基礎研究の金を出すべきです」と顔を真っ赤にして訴えたに違いない。(シニアエディター 関口一喜)
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