「君のためを思って」「今の若い子は」もはやハラスメント? 年長者から言われると半数以上が不快に感じる

   「私が若い頃は」「今の若い子は」――そんな何気ない一言が、若手にとっては職場のストレスや違和感として記憶されることがある。ハラスメントとまでは言えないが、不快感や戸惑いを覚える言動を「グレーゾーンハラスメント」という。

  • その発言もしかしたら不快感を与えているかも
    その発言もしかしたら不快感を与えているかも
  • 職場のグレーゾーンハラスメント実態と社内規程の機能性に関する調査(KiteRaプレスリリースより)
    職場のグレーゾーンハラスメント実態と社内規程の機能性に関する調査(KiteRaプレスリリースより)
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  • 職場のグレーゾーンハラスメント実態と社内規程の機能性に関する調査(KiteRaプレスリリースより)

4割近くが「10歳以上はなれた人との会話などで不快感」

   社内規定DXサービスなどを提供する株式会社KiteRaが「職場のグレーゾーンハラスメント実態調査」を行った。2025年6月に、18~65歳のビジネスパーソン1196人を対象にインターネットで調べたという。この調査によると、10人中4人に近い38.9%が、10歳以上はなれた人との会話などで不快感を抱いた経験があった。

   具体的には、「私が若い頃は」や「今の若い子は」といった世代をめぐる発言だ。年長者からこのように言われた人のうち、過半数にあたる53.1%が「不快感や違和感」を覚えていた。また、「君のためを思って」と一方的にアドバイスされたり評価されたりした場合も、56.8%が不快を感じていた。

善意の発言がすれ違いを生む恐れ

   調査ではほかにも、以下のような言動に不快感や違和感をもったとの回答が多かった。

・「彼氏・彼女いるの?」「休日の予定は?」といったプライベート質問
・不機嫌な態度や雰囲気で接する(ため息、舌打ち、あいさつを返さないなど)
・「絶対~したほうがいい」と断言
・「〇〇だから仕方ないね」といった、相手を限定するような発言

   このような発言やふるまいを、自分がした覚えがある人は全体の約4割いた。その意図をたずねると、60.5%が「自身としては相手のためを思って行った」と答えたという。善意のつもりの発言が意図せず、すれ違いや摩擦を生む構図が浮かびあがる。

   そのため調査は「良かれと思って行った言動が、グレーゾーンハラスメントにつながる可能性について、職場での認識や意識が十分に行き届いていない現状が浮き彫りになった」と結論づけている。

世代でくくる気持ちをぐっと抑える

   ところで、年長者の嘆きは現代のビジネス空間だけにとどまらない。臨済宗円覚寺派管長で花園大学総長の横田南嶺(なんれい)さんは、円覚寺の公式サイトに「今時の若者は」と題するコラムを書いている。その一節。

「我々の修行の世界でも、『この頃の修行僧は』というと、そのあとは必ずなっていない、たるんでいると言われます。(中略)「わしらの頃にはなあ」というお説教になるのが定番であります。こんな話を私なども何遍も何遍も聞いてきました。聞いて何になったかというと、ほとんどなににもなりません」

   この古くから続く課題に対し、心理カウンセラーで著書「話し方で老害になる人 尊敬される人」がある五百田(いおた)達成さんは、「世代でくくってしまって納得したい気持ちをぐっと抑え、極力、目の前の人と向き合い話を続ける」ことを「若者との正しい話し方の基本」として強く勧めている。自戒とともに考えたい。「私が若い頃は」と懐古し、「今の若い子は」と無遠慮にひとくくりにすることは、無意識のうちに壁を築いてしまう。この壁をのりこえるためにこそ、目の前の個性を大切にする対話の姿勢が求められている。

(ジャーナリスト 橋本聡)

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