温泉旅館やJR駅構内など人が多いところにもクマが出没、街に住む人たちも安穏としていられない。2025年11月10日放送の情報番組「ゴゴスマ」(TBS系)は東北地方を中心に相次ぐクマ被害を取り上げ、経済学者の成田悠輔さんが「こんなにクマが出てくるようになった理由というのはわかっているのか」と疑問を投げかけた。
「以前のクマの常識と違って来た」
番組では今年の青森、秋田、岩手、山形、宮城の東北5県のブナ結実状況が「大凶作」であることを林野庁発表のフリップを示し、クマの主食となるブナの実の不作が大量出没の原因になっているのではないかと説明した。
スタジオがざわついたのは、ニュース解説担当で元CBC特別解説委員の石塚元章さんが「(クマが)凶暴化している気がする。家の中まで入ってきたり何もしてない人にいきなり襲いかかったりと以前のクマの常識とちょっと違っているような気がする」と話したときだ。
クマの生態に詳しい岩手大学農学部准教授の山内貴義さんは「かなり人慣れした個体が増えていて2年前ぐらいから顕著になってきたけど、最近はそれに拍車をかけて凶暴化というより凶悪化している」と話した。MCの石井亮次さんも思わず「凶悪化」に反応し「おわ~」と声をあげた。
里に下りたクマは「死に物狂いでエサを探している」
石井さんが「クマって頭いいんですか」とたずねると、山内さんは「非常に学習能力が高くて餌に対する執着心が高い。お腹すかせている状態で里におりて死に物狂いでエサを探しているわけですから、人間もそれなりの対処をしないとこういう事故はなかなか減らない」と一層の注意を促す。
石塚さんが「言い方を変えると昔より人間は(クマに)なめられているというところがあるのでしょうか」と聞く。
山内准教授は「まさにその通りで、クマだけでなくいろんな野生動物が人間のことをなめてかかっていると言った方がわかりやすい」と話した。
「戦えると思っても戦わないことです、勝てません」
クマに出会った時の対処法ついて、コメンテーターの信州大学特任教授の山口真由さんは「(知人から)ヒグマは難しいけどツキノワグマには戦ってくださいと言われたけど、私は無理だろうなと思った」と話した。
山内さんは、それはダメ、無謀な行動に出ないようにと念をおした。
「絶対に戦わないでください。生身の人間が接触したら絶対にかなわない。戦えると思っても戦わないでください」
万一、クマに襲われたらどうするか。「うつ伏せになって顔と腹部を守り首の後ろに手を回して保護する」といった対処法も紹介された。生命の危険にさらされる危機が、都市部にも迫っている。
(ジャーナリスト 佐藤太郎)