「日中共同世論調査」などで知られる「言論NPO」は2025年11月17日、22日から24日にかけて北京で予定されていた有識者会議「第21回東京-北京フォーラム」の開催を延期すると発表した。16日に中国側の実行委員会から、高市早苗首相の「台湾問題に関して挑発的な発言と武力威嚇」があったことを理由に延期の通知があったという。フォーラムは、尖閣諸島の国有化で日中関係が悪化した翌年の13年にも延期されたことがある。日本側は、今回の中国側の対応は、当時を「はるかに上回る強いメッセージ」だと受け止めている。「やっぱり台湾問題は別格」「強く反応するテーマ」言論NPOによると、通知はメールで送られてきたといい、その中で中国側は「高市首相が台湾問題に関して挑発的な発言と武力威嚇を行い、中国側が厳重に抗議した後も誤った立場を撤回しませんでした」と主張。次のようにイベントと世論調査結果公表の延期を伝えてきた。「(上記の経緯は)正常な交流協力の雰囲気を損なうものであります。こうした状況を慎重に検討した結果、やむなくフォーラム及び世論調査の延期を決定いたしました」日本側のこれまでの準備に感謝する文言もあり、「交流対話に適した環境が整いました折」には、改めてフォーラム再開への協力を求めるとしている。記者会見した言論NPOの工藤泰志理事長は、尖閣諸島問題が起きた時と比べて「はるかに上回る強いメッセージがあるということを受け止めざるを得ない」と説明。宮本雄二・元駐中国大使は、中国側の日本に対する空気感は「大きくは変わっていない」とする一方で、「やっぱり台湾問題は別格」とも指摘。中国側が内政問題だと主張していることもあり、「強く反応するテーマ」だとみている。ただ、中国側は「日中関係がどうなってもいいと考えているわけではない」ため、一定期間が経過した後に事態収拾に動くとの見方を示した。工藤氏は「可能であれば年内、可能でなくても年度内」の開催を目指したいとしている。2回延期された世論調査発表、何を中国側は懸念したのかイベントとセットで延期が発表された日中共同世論調査は、実は今回が2回目の延期だ。当初は11月4日の発表が予定されていたが、3日前の1日に中国側から延期の連絡があった。さらに10日になって、17日に記者会見を行うことが発表されたものの、今度は前日の16日に再延期が発表されたという経緯がある。1回目の延期の経緯は2回目とは大きく違うものだったようだ。工藤氏は「私の認識と他の人の認識がちょっと違うので、私の認識が正しいかどうか分からない」と断った上で、互いの国民に対する感情が良くないとする結果を中国側が懸念したとの見方を示した。10月31日に行われた韓国・慶州で行われた日中首脳会談で、両首脳が笑顔で握手したことから、工藤氏の見立てでは「中国側は多分、日中関係の対話を、これ(首脳会談)によって進めたいと思っていた」。そんな中で調査結果を発表することで、前向きな雰囲気に水を差すのではないか、という推測だ。「そんなときにこんな、またお互いの意識が悪化しているみたいな世論調査を発表していいのか?というふうに私には聞こえた」世論調査は著作権を日中共同で持っているため、日本側が一方的に発表することはできないとしている。工藤氏は「我々としては何としても中国側に公開を迫るつもり」と話した。(J-CASTニュース編集委員兼副編集長工藤博司)
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