キャッシュレス式の駅のロッカーに荷物を預けたところ、通信障害で荷物が取り出せずにそのまま帰宅した――。
こうした趣旨のX投稿が2025年11月24日に投稿され、注目を集めた。なぜ通信障害が起きてしまったのか、荷物はどうなったのか。投稿者とロッカーを開発・管理する会社に話を聞いた。
「常軌を逸したトラブル」、「出発までの解決は難しいと判断して対応をあきらめました」
投稿したのは、「辺境レポーター」として活動する大熊杜夫さんだ。11月24日にXで、「通信エラーが発生しました」と表示されたロッカーの画面の画像とともに、「なんと、コインロッカーの通信障害とかいう常軌を逸したトラブルにより、大阪駅に荷物を置いて帰宅する男」という状況を投稿した。
これに「うわー、これはキツイ。海外だったら完全に詰む」「こういうトラブルもあるからアナログのが安心かもね」「コインロッカーで通信障害が有るのか」といった驚きや同情の声が寄せられた。
J-CASTニュースの取材に応じた大熊さんによると、大熊さんは24日18時頃、大阪駅の御堂筋北口にあるキャッシュレス式のコインロッカーに荷物を預けた。その後、日付が変わって25日0時15分頃に荷物を取り出そうとしたが、できなかったという。
「(ロッカーのタッチパネルの)『荷物取り出し』をタッチして、遷移した画面にてICカードを押しましたら『現在お取り扱いできません』の表記が出て、またカード読み取り機械の液晶にも『ネットワーク異常』が出ており気づきました」
ロッカーのタッチパネルにはコールセンターへの問い合わせ番号が表示されていたため、大熊さんは電話をしたが、対応時間外だったという。また、駅の係員に尋ねたところ、「基本的にはコインロッカー会社の扱いになり我々では対応できない」と言われたという。
大熊さんは0時33分発の寝台特急「サンライズ出雲」に乗車する予定だったため、「出発までの解決は難しいと判断して対応をあきらめました」と当時の状況を説明した。なお、大熊さんはその後の投稿で、預けた荷物の中には貴重品はなかったことを補足している。
大熊さんは東京に到着後、対応開始時間の7時に再びコールセンターに電話をしたところ、「(1)利用時間分の代金は頂かないこと (2)指定場所まで発払いで郵送すること を先方より申し出ていただき、驚きつつもこの申し出を受けました」と説明した。
ロッカーの管理会社は現地にもスタッフを派遣していた
では、この通信障害はどのようなものだったのだろうか。
このロッカーを開発・管理するSPACER(スペースアール)の担当者は、28日のJ-CASTニュースの取材に、24日の21時頃から、大阪駅に設置した6台のうち3台で通信が不安定になったと説明した。ロッカーには、ロッカーやタッチパネルを制御する通信と、決済端末の通信(simカード)の2つが使用されているが、今回エラーが起きたのは決済端末の方だったという。これは、外部の会社から手配しているものだとした。
つまり、決済端末の通信エラーにより支払いができなくなったためロッカーが開かなくなったのだとし、「ロッカーを制御するための通信は通常通り動いていたので、コールセンターなどにお問い合わせいただければ、遠隔でロッカーの操作をすることができたという状態」だったという。
実際、対応時間内の23時までにコールセンターに問い合わせをした利用者に対しては、その場で開錠をしたり、電車の時間の関係で間に合わない人には無料で荷物を郵送する手配をしたりする対応をしたという。そのほか、0時頃まではSPACERのスタッフがトラブルのあったロッカーの前に立ち、対応したとした。0時の時点で荷物が残っていたロッカーは4つ。そのうち1件で、翌日に荷物が取り出せなかったと問い合わせがあったという。
通信に頼らなくても操作ができるロッカーの開発着手も
通信障害の原因について、前出の担当者は、決済端末のメーカーから提供されたsimカードが、「特定の周波数しかキャッチできないsimカードだったことが今回の調査でわかりました」と説明した。
通信障害のあった時間帯、大阪駅の3つのロッカー周辺では、ロッカーの決済端末のsimカードに対応する周波数が逼迫する状態だったという。
そのため、「今週からいろいろな周波数をキャッチできるものに切り替えの対応を行い、通信を安定させるという対策をとっています」と対策を説明した。
さらに今後は、通信に頼らなくても操作ができるロッカーにアップデートしていく予定だとした。現在のシステムでは、預けた人(ID)と取り出す人(ID)が同じであると判定するために、交通系ICであれば交通系ICの、クレジットカードであればそのクレジットカードのサーバーにアクセスする必要があるが、その通信をしなくても判定できるようにすると説明した。すでに開発にも着手しているという。
しかし、担当者は、「もしも通信が落ちた時にはもう売り上げを放棄することにもなるんですけど、インフラ的な宿命ですかね」と苦笑した。
担当者は今回の件について、「ひとえに弊社の仕組みや仕様で、ご利用のお客様に大変ご迷惑をおかけしました」と謝罪。そのうえで、「やはりインフラサービスなので、もっと強固なものにしていかなきゃいけないなという反省点がありますので、これは皆様に対してもお約束していきたいです」と話した。
ちょっと大事になりつつあるので顛末を。
— 大熊杜夫/????????????????????????????????━辺境レポーター (@ak_prc_dprk) November 24, 2025
コールセンターが7-23でしか対応しておらず、この時東京行きの終電まで5分だったこと、スーツケースに貴重品がないことからこの日は回収を諦め東京へ。
朝東京駅について7時過ぎに電話したところ、先方負担での郵送という形で事なきを得ました。… https://t.co/PQG8k1J7f8