名称変更、最大のメリットは「求人強化」
名前を変えてあたかも「新しい店です」というフリをすれば集客につながるイメージが強いけれど、歓楽街では有名キャストがそろっていない限り新店は不利である。高いお金を払って失敗をしたくないのが現代の客の本音で、洋服屋や飲食店のように「とりあえず行ってみるか」とはあまりならない。
どちらかというと名称変更のメリットは、求人の方が大きい。「新しいところなら、みんなゼロスタートなのかな」と思う未経験者や、「イチから一緒に(店やプロダクションを)盛り上げてみたい」なんて新天地を求めた中堅が引っ掛かれば、自然と働き手が集う。人気商売は宣伝力やネームバリュー、運営陣の人脈も大事だが「人材」が不足すれば何も始まらないので、求人強化→集客→売り上げへとつながるといったところ。
ただし、名前を変えただけの店やプロダクションは、大人気のベテラン組をつかまえるのが難しい。なぜなら、彼女たちは知識と情報収集能力に長けており、知人ネットワークで「あそこは元〇〇で、完全なる新設ではないらしい」なんて噂をいち早くキャッチするからだ。ころころと名前を変える=ワケありなことを知っていれば、わざわざそこを選ぶ必要がないため、頻繁な名称変更をするところほど有名人が集まりづらい傾向がある。
とはいえ、未経験~「そこそこ」レベルの人材がそろえば、店やプロダクションは回るもの。求人強化、そして未来の売り上げのためにわざと名前を頻繁に変えるやり方を取る会社も一定数存在するのだ。
表札を入れ替えるだけなら働き手に大きな影響はなく、税金対策や新人の流入など会社にとってのメリットが満載。税金の問題は対策済みでも、別の目的が理由で改名を繰り返すケースも見られるのがこの世界の少し変わった部分だろう。
ただ、あまりにころころと変わる場合は客も働き手も注意すべきである。なぜなら、税金をチョロまかしまくり、在籍もほとんどいないor全く定着しておらず、「ギリギリ」の状態を延々とキープするまずい会社に出会うと、悲惨な目に遭う可能性が高いからだ......。
【プロフィール】
たかなし亜妖/2016年にセクシー女優デビュー、2018年半ばに引退しゲーム会社に転職。シナリオライターとして文章のイロハを学び、のちにフリーライターとして独立する。現在は業界の裏側や夜職の実態、漫画レビューなど幅広いジャンルのコラムを執筆中。