高市早苗首相の台湾有事や存立危機事態を巡る国会答弁で、日中関係の混迷が続いている。これに石破茂前首相が苦言を呈したところ、駐日中国大使館や中国メディアが高市批判へのネタとして反応した。さらに日本では、石破前首相が中国の手先であるかのような偽情報が拡散されるなど、SNSでの議論は泥仕合の様相を呈してきた。「台湾は中国の一部」と言い切ったかのように石破首相は2025年11月26日に東京都内で講演。毎日新聞は同日付の記事で、その様子について、「石破氏は、1972年の日中国交正常化以降、台湾は中国の一部とする中国側の考えを歴代政権は理解し、尊重してきたと説明。『変えてはならないことだし、ものすごく注意しながらやってきた』と自身の経験も交えて述べた」と報じた。駐日中国大使館の公式X(旧Twitter)は11月28日、この記事をポスト。記事の内容を要約する形で、「1972年の日中国交正常化以降、台湾は中国の一部とする中国側の考えを歴代政権は理解し、尊重してきた。変えてはならないことだし、ものすごく注意しながらやってきた」と記した。毎日新聞の記事に対し、日本維新の会の音喜多駿・元参院議員はXに「めちゃめちゃ利用されてますやん...(溜息)」と投稿。石破前首相を「醜く奇妙な生き物」などと執拗に罵ってきた日本保守党の北村晴男参院議員はXで、「中国に依存せずにすむ国を作るのが政治の責任です」と持論を展開するなど、右派層を中心に批判の矛先は石破前首相に向けられることとなった。さらに産経新聞は28日、この動きを「中国大使館、自民党の石破茂前首相の発言『台湾は中国の一部。変えてはならない』をX投稿」との見出しで記事化。毎日新聞の記事によれば、石破前首相が「台湾は中国の一部」と断定するような発言をしたとは読み取れないのだが、伝言ゲームのように石破前首相の発言であるかのように広がり始めている。石破叩きはYouTubeやTikTokでも再生数稼ぎに利用されさらに悪質なデマも見られる。複数の右派系Xアカウントが石破茂前首相と公明党の斉藤鉄夫代表について、中国国営テレビ(CCTV)のインタビューを受けて高市内閣の方針を批判したとして、動画を添えて拡散した。多いものは1万件を超えるリポストがある。これにより、石破前首相や斉藤代表に対する「チャイナの手先であることが証明されました」「スパイ確定でいいんじゃね」などの批判が目立つ。だが、問題の動画に映っている石破前首相のインタビューは日本のテレビ番組の映像で、斉藤代表が話す映像も日本国内の党会合で撮影されたもの。2人が「中国国営テレビのインタビューを受けた」というのは完全なデマだ。一部の投稿にはXユーザーが匿名で注釈を添える「コミュニティノート」が付けられている。また、同じネタを使った偽情報のショート動画の投稿も相次ぐ。YouTubeの「【フィル】日本の政治解説」というチャンネルでは、「これは中国の公営放送で石破前首相がインタビューで高市内閣を非難するという内容ですが『日本人も高市総理を批判している』と中国共産党のプロパガンダに乗っかる形で回答しています。ついでに公明党の党首も便乗しています」と虚偽の内容を拡散。この動画は約49万回再生され、1万2000件を超える「いいね」が付けられている。他にもYouTubeやTikTokには「石破、中国のご機嫌取りに必死」「石破ついに中国デビュー」「石破と公明党が中国のテレビで高市批判」など、デマで石破前首相を叩くショート動画があふれている。これらの偽情報に対し、「こうやって、悪意あるデマが拡散される」「悪意あるコメントをしてる人達もデマの手伝いをやってますね!どっちが国を陥れてるのか?!」などの冷静なコメントもある。
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