首都圏の通勤ラッシュがどんどんひどくなっている JR埼京線は混雑率163%!コロナ前に戻ったわけ

   新型コロナウイルスの感染拡大により、いったん姿を消した朝の「痛勤」。しかし東京では、混雑率がじわじわ上昇、 国土交通省が2025年7月に発表した調査によると、東京圏の平均混雑率は139%(2024年度実績)で、前年より3ポイント高くなった。4年連続の右肩上がりとなっている。

  • 首都圏の通勤ラッシュ、根本的な解決策は?(画像はイメージ)
    首都圏の通勤ラッシュ、根本的な解決策は?(画像はイメージ)
  • 国土交通省ウェブサイトより
    国土交通省ウェブサイトより
  • 公益財団法人日本生産性本部「第17回働く人の意識に関する調査」より
    公益財団法人日本生産性本部「第17回働く人の意識に関する調査」より
  • 首都圏の通勤ラッシュ、根本的な解決策は?(画像はイメージ)
  • 国土交通省ウェブサイトより
  • 公益財団法人日本生産性本部「第17回働く人の意識に関する調査」より

板橋―池袋、中野―新宿、川崎―品川は混雑率150%超す

   混雑率は列車の定員をもとに計算している。100%の目安は「全員が座席につくか、つり革につかまるか、ドア付近の柱につかまることができる」。150%は「肩が触れ合わない程度。ドア付近の人が多くなる」。さらに200%になると「体が触れ合い、相当圧迫感がある。ドア付近の人は身動きがとれない」とされる。

   路線別にみると、JRで最もこみあうのは埼京線(板橋―池袋)で163%。次いで中央線(中野―新宿)の161%。京浜東北線(川口―赤羽)の156%や、東海道線(川崎―品川)の154%も目立っている。

地下鉄三ノ輪―入谷、中井―東中野など

   地下鉄では日比谷線(三ノ輪―入谷)の163%が最も混雑している。大江戸線(中井―東中野)の155%、南北線(駒込―本駒込)の152%などが続く。今回の調査で私鉄各線は150%未満だった。

   ふりかえれば昭和の高度成長期、東京圏の平均混雑率は200%をはるかに超え、「殺人ラッシュ」や「通勤地獄」と呼ばれた。1998年の国会でも「国民の健康や労働意欲に悪影響」「通勤者が押し込まれるような状態は人権問題に近い」などと議論された。

    このため鉄道各社は、新規路線や複々線化、オフピーク通勤キャンペーンなどに取り組んだ。コロナ禍前の2019年度は163%。パンデミックで状況は一変し、在宅勤務(テレワーク)やオンライン授業が広がって、2020年度は107%と、前年より50ポイント以上も劇的に低下した。

依然として続く首都圏への人口集中

   しかし、これを底にして、経済活動の再開後、混雑率は上昇に転じる。根本的な原因は依然として首都圏への人口集中が続いていることだろう。働き方改革やオフピーク通勤の促進にもかかわらず、郊外から都心への通勤需要は高いままだ。

   さらに、テレワークの縮小の影響もみられる。公益財団法人・日本生産性本部は2025年7月、「テレワーク実施率は16.8%」と公表した。この調査の対象は20歳以上の1100人。コロナ禍が始まった2020年には31.5%、およそ3人に1人の割合を記録したのに比べ、半減している。チームの信頼関係や新人教育に「対面が有効」と考える企業が増え、出社推奨につながっている。

   大和総研も2025年7月、「世界的に見ても日本のテレワーク利用率は低く、特に女性の低さが目立つ」とするレポートを出した。今後は、テレワークと出社を組み合わせた「ハイブリッド型」が定着すると予測する。快適な通勤がどの路線でも実現し、朝の苦行が過去のものとなる日はなお遠そうだ。

(ジャーナリスト 橋本聡)

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