JR特急から自由席が消えていく 代わりに増える「全車指定席」必ず座れるが割高、ガラガラでも予約必要で面倒

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指定席の意外なデメリット

   混雑が激しい特急では、指定席にはメリットしかない。指定席を予約しておけば必ず座ることができ、両数の少なくなった自由席に並ぶ時間を省略できる。途中駅から自由席に乗ろうとすると、座れないことも多い。列車によっては延々と立っていなくてはいけない。

   鉄道会社の側も、全席を指定席にすることによって確実に着席サービスを提供可能になる。車掌が車内で自由席券を売って歩くよりも、全車指定にして車掌を減らし、人件費を削減するほうがコストカットになるという事情もある。チケットレスで乗車すると着席データが把握できるので、車掌の業務量も削減できる。

   だが地方路線だと全車指定席にはデメリットもある。まずチケットレス予約の対象になっていない路線が多く、さらには駅に指定席券売機もないところがある。交通系ICカードとチケットレス予約の組み合わせ、という主要路線では当たり前のことができないのだ。こういう路線では当然、車掌は車内を回らなければならないが、短編成の列車なので時間はかからない。

   JR東海は一部区間で30kmまで330円、50kmまで660円という、格安の自由席券を提供しているという例もある。自由席の利用促進を意識し、通勤・通学定期と組み合わせて乗ってほしいという意図だろう。JR四国では25kmまで440円である。

   首都圏在来線特急で「全車指定席」にできるのは、交通系ICカードとチケットレス予約という組み合わせができるからである。

   JR北海道では、この組み合わせができないのに全車指定席にしている列車が結構ある。3月に全車指定席化する「宗谷」「サロベツ」「オホーツク」の場合、首都圏と同様のことはできない。「えきねっと」を使用した割引券や、札幌~旭川間で「在来線チケットレス特急券」を導入するとしているが、短距離で立っていても問題がない(その場合は「座席未指定券」を買うのだろうが)場合、純然たる増収になることと考えられる。

   閑散路線で気軽に特急に乗って座れるのは自由席のメリットだが、そういうのがなくなり予約が必要、となると鉄道に乗ろうとしなくなるのでは?(小林拓矢)


筆者プロフィール

こばやし・たくや/1979年山梨県甲府市生まれ。鉄道などを中心にフリーライターとして執筆活動を行っている。著書『京急 最新の凄い話』(KAWADE夢文庫)、『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)。

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