円相場は2026年3月13日、再び1ドル=159円半ばを記録し、160円台に接近している。イラン情勢が緊迫し、エネルギー問題も噴出するなかで、日本経済は大きな局面を迎えている。高市早苗首相は今年1月の講演で、円安について「輸出産業にとって大チャンス」「外為特会はホクホク状態」と述べ、波紋を呼んだ。発言の意図については後に説明がなされたものの、市場では政府が円安を容認しているとの見方も広がった。通貨の価値を押し下げる要因にも高市政権は、財政支出を拡大する積極財政と、低金利を維持する金融政策を組み合わせた経済運営を続けている。こうした政策は景気を下支えする効果がある一方、通貨の価値を押し下げる要因にもなりやすい。さらに大きな要因となっているのが日米の金利差だ。アメリカはインフレ対策として高金利政策を続けているが、日本は低金利を維持している。この差が拡大すると、資金は金利の高いドルへと流れやすくなる。結果としてドル高・円安が進みやすい構造が生まれる。これらのことから、市場では円安が長期化する可能性を指摘する声も少なくない。日本の原油輸入の約9割は中東に依存この脆弱な経済構造に追い打ちをかけるのが、緊迫するイラン情勢である。原油の通り道となるホルムズ海峡の緊張が高まり、世界の原油価格は米国時間3月11日深夜に急騰して1バレル100ドルの節目を超えた。日本の原油輸入の約9割は中東に依存しているとされる。エネルギーコストの上昇は産業界の収益を圧迫するだけでなく、物流コストを通じてあらゆる物価を押し上げる。政府は備蓄放出のほか、ガソリン価格を抑制する補助金の再開を明らかにしているが、このまま原油価格が上がり続ければ、日本経済はコストプッシュ型スタグフレーション、いわゆる「悪いインフレ」の直撃を受けることになる。日銀が2026年1月23日に出した「経済・物価情勢の展望」では、消費者物価を「政府による物価高対策の効果もあり、本年前半には、2%を下回る水準までプラス幅を縮小していくと考えられる」と予想していた。だが、そこで懸念されていた「資源・穀物価格については、地政学的な要因や天候要因等により、大幅に変動するリスク」が的中する格好となっている。日米首脳会談で打開の光は見えるのかこうした状況下で注目されるのが、3月19日にホワイトハウスで行われる日米首脳会談だ。イラン情勢の議論、そしてエネルギー協力は最重要課題の一つとなるだろう。中東依存を減らすため、米国産LNG(液化天然ガス)や原油の安定供給を確保することは、日本の経済安全保障に直結する。とはいえ米国からエネルギーを買い支えるためのコストは、円安によって膨れ上がる。そもそも、トランプ政権下でのアメリカ・ファーストな交渉において、財政基盤の弱まった日本がどこまで対等な条件を引き出せるかは不透明だ。はたして、高市政権は市場からの信認を取り戻し、日本経済を再生させることはできるのだろうか。
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