高市早苗首相とトランプ米大統領による日米首脳会談がアメリカ時間2026年3月19日、ワシントンで開催された。
世界の関心は緊迫化するイラン情勢とホルムズ海峡の安全確保に集まったが、水面下で進められていた経済安全保障の最大の焦点として正式に合意されたのが、「南鳥島周辺におけるレアアース泥の日米共同開発」である。これはエネルギー安全保障の観点から、大きな注目を集めている。
レアアースを外交カードとしてきた中国
日本が今年2月、深海(水深約6000メートル)からの試験採掘に成功したことを受け、日米は直ちに実用化に向けたワーキンググループを設置した。資金・技術の両面で米国が本格的に参画するだけでなく、市場を席巻する安価な中国製に対抗するため、補助金などを活用した「最低価格制度」の導入にも踏み込んでいる。
現在、中東危機により、世界のサプライチェーンの脆弱性がかつてないほど浮き彫りになっている。
特に、電気自動車(EV)のモーターや風力発電のタービン、さらにはF-35戦闘機やミサイル誘導システムといった最先端兵器の製造に不可欠なレアアースは、極めて重要な資源である。
こうしたレアアースの生産・精製は、長らく中国が世界の大部分のシェアを握ってきた。
そして中国は、この圧倒的な優位性を外交上の武器として躊躇なく行使してきた。
高市首相による台湾有事への言及などを契機として、中国政府が今年に入り、デュアルユース(軍民両用)製品の対日輸出規制を強化したことも記憶に新しい。
しかし、このような資源の武器化に対しては各国も警戒を強めている。
近年、日米に加え、EU(欧州連合)やオーストラリアなどもレアアースの中国依存からの脱却に向けて動き出している。
各国は政府主導で巨額の財政支援を行い、新規鉱山の開発や代替技術の研究、さらには同志国間での国際協調供給網の構築に取り組んでいる。
日本のレアアース探査活動を意識して威嚇か
こうした状況の中で合意された南鳥島での日米共同開発は、中国にとって極めて警戒すべき計画となり得る。
そのため、懸念されるのが妨害工作である。そう考えられる理由がある。
2019年、米国務省は、中国が南シナ海において東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の排他的経済水域(EEZ)内での天然資源採掘活動を妨害しているとして非難した。
また、東シナ海のガス田においても、日本の抗議を無視して掘削施設の建設と資源採掘を強行している事実がある。
さらに今回、レアアース開発の舞台である日本のEEZ内、南鳥島周辺でも、2025年6月に中国海軍の空母「遼寧」が侵入し、艦載機の発着艦訓練を繰り返す事案が発生している。
これを単なる外洋進出訓練ではなく、掘削本格化を見据え、日本のレアアース探査活動を意識した威嚇行為とみる専門家もいる。
海底資源開発の枠組みを超えるプロジェクト
現在、イラン情勢の緊迫化を受け、トランプ政権はホルムズ海峡の航行安全確保やイスラエル防衛など、中東に多大な軍事・外交リソースを投入している。
過去の事例を踏まえると、米国が中東対応に注力する中で、このような挑発行為が増加する可能性も否定できない。
こうした状況を踏まえると、南鳥島でのレアアース開発は、もはや単なる海底資源採掘の枠を超えたプロジェクトである。
日本は深海採掘技術の開発を加速させると同時に、米国との緊密な連携のもと、現場における防衛体制の強化も求められるだろう。