東洋医学における「虚弱体質」とは?
「虚弱に生きる」に登場する「虚弱体質」とはどのような体質なのか。
北里大学北里研究所病院で漢方鍼灸治療センター長を務める星野氏によれば、生まれつき体力がない体質という意味合いで一般的に使われている。ただし、こうした先天的な原因に加え、栄養不足や睡眠不足、環境悪化などの原因で、後天的に虚弱になるケースもあるという。
東洋医学の診断では、患者を治療する際の指針となる「証(しょう)」という考え方があるという。患者一人ひとりの体質や体力、症状の現れ方など、患者の心身全体の状態を総合的に判断するもので、ここから治療方針が決まる。
証を診断する物差しの1つが「虚実(きょじつ)」だ。虚実は2つに分けられ、体力や気力が足りない状態を「虚証(きょしょう)」と、反対に余分なものが溜まって健康を害している状態を「実証(じっしょう)」と呼んでいる、と星野氏は説明する。
虚弱体質の人は、東洋医学では「虚証」と捉えられることが多い。症状としては、疲れやすさや食欲低下、摂食不良、体重減少などが起こるという。
なお星野氏は、「実証」が良いわけではないと補足する。現代医学における内臓脂肪症候群(メタボリックシンドローム)のような事例は「実証」にあたりうるという。また、過度な運動によって風邪を引きやすくなることもある。つまり、虚証や実証のどちらでもない中間=中庸が理想だと指摘する。
では、どのような場合に虚弱体質だと診断されるのか。星野氏によれば、東洋医学的な診断に入る前に、まず現代医学の検査で器質的・精神的な疾患がないかを確認する。「我々の漢方外来に来る患者さんは、内科や産婦人科、精神科などを受診し、それでも解決しない方が来る場合が多いです」
一方で、先天的な虚弱は「悪いことばかりではない」とも述べる。「実証」の人に比べて生活に気をつけるため、生活習慣病になりにくく、「長生きすることも十分ありえます」。後天的に虚弱になる場合でも、不調や疲れといった症状が、環境を変えるべきだという警鐘になると説明した。
虚弱体質について、職場など周囲の理解が得られにくい状況は多いという。星野氏は「今の社会は、全員が冬でも夏でも同じ時間に働くことを求めます。しかし例えば農家なら、春と夏は夜明け前から働いても、冬は休む。そういうメリハリが本来あったはずです」との考えを示した。
最後に星野氏は、「全ての人が尊重されて保護されるようにしないと、これまで虚証の人達が担ってきた社会的役割などが失われ、社会全体が継続していかない。いま虚弱に悩んでいる方は割を食っているかもしれないけど、絶望しないでほしい」と訴えている。