メガソーラー補助金廃止へ動く高市政権、監視も厳格に 太陽光発電の普及に旗を振った孫正義氏の立ち位置は今

   電気事業法の改正案が2026年3月24日、閣議決定された。これまで事業者の自主性に任されていた太陽光発電設備の安全性確認を厳格化する内容である。

   2025年12月23日には「大規模太陽光発電事業(メガソーラー)に関する対策パッケージ」も策定されており、2027年度以降は新規メガソーラーへの補助金を原則廃止する方向へと舵が切られている。

  • ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長(写真:AP/アフロ)
    ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長(写真:AP/アフロ)
  • 中国「上海電力」、山口県岩国市でメガソーラー建設(写真:west/アフロ)
    中国「上海電力」、山口県岩国市でメガソーラー建設(写真:west/アフロ)
  • ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長(写真:AP/アフロ)
  • 中国「上海電力」、山口県岩国市でメガソーラー建設(写真:west/アフロ)

原発が再稼働したからメガソーラーは不要なのか?

   2011年に発生した東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所事故をきっかけに、クリーンなエネルギー自給の手段として注目されたのが、再生可能エネルギー、とりわけ太陽光発電であった。

   2012年にFIT制度(固定価格買取制度)が導入されたことを契機に、全国各地でメガソーラーが乱立する「太陽光バブル」が発生した。

   しかし、普及が進むなかで、森林伐採による土砂災害リスクや景観破壊、不透明な外資参入などが問題視され、メガソーラーは次第にマイナスのイメージを帯びるようになった。

   かつてメガソーラー普及で積極的な発言をしていたひとりが、ソフトバンクグループの孫正義氏だった。

   孫氏は私財を投じて「自然エネルギー財団」を2011年8月に設立し、さらに同年10月、再生可能エネルギー事業を手がけるSBエナジーを創設。太陽光発電が原子力をはじめとする他の発電手段よりも低コストであると主張してきた。

   しかし2015年に九州電力の川内原子力発電所1号機が再稼働し、岸田政権下で「原発の復権」が事実上容認されると、2023年にはSBエナジーの株式を豊田通商の子会社(テラスエナジー、2025年4月にユーラスエナジーホールディングスと経営統合)へ譲渡するなど、再生可能エネルギーへの関与は後退したようにも見える。

   近年では、アメリカで日米企業を巻き込んだ総額80兆円規模の「AIデータセンターおよび大規模ガス火力発電所」建設プロジェクトに参画している。

   もはや彼の関心は、イデオロギーとしての脱原発ではなく、AI(人工知能)を稼働させるための膨大な電力確保へと現実的にシフトしたと言えるだろう。

原発事故の帰還困難区域にソーラーが乱立

   一方で、日本のエネルギー政策の歪みを最も象徴的に示しているのが福島県である。

   原発事故により長年立ち入りが制限されていた帰還困難区域では、避難指示解除後も農業再開や居住が困難な土地が多く、結果として巨大なメガソーラーが次々と建設されていると、3月24日の読売新聞が報じている。

   放射能によって故郷を奪われた土地が、今度は黒く光る無数のパネルで覆われ、再び都市部へ電力を送り出している。

   この光景を、原発事故からの復興の象徴と捉えるか、それとも都市の電力需要のために地方が利用されるという、原発と同様の構造の再現と見るか――評価は分かれるだろう。

   少なくとも、原発事故の被害を受けた福島の人々に対して、十分な補償がなされているとは言い難い。

世界情勢に左右されない安定したエネルギー自給を

   資源エネルギー庁によると日本のエネルギー自給率は、2023年度時点で15.3%とG7加盟国の中で最も低い水準にある。

   さらに現在、アメリカとイスラエルによるイラン攻撃を契機として、日本のエネルギー安定供給は再び大きく揺らいでいる。

   こうした状況のなかでの電気事業法改正案の閣議決定を受け、自然エネルギー財団は2026年3月、「中東危機:今こそエネルギー転換の加速を/自然エネルギー拡大こそ化石燃料依存からの脱却の切り札」とする声明を発表した。

   同財団は、高市早苗首相が掲げた「資源国に依存する外交を終わらせ、エネルギー自給率100%を目指す」という方針を踏まえ、エネルギー自給率向上には、ソーラーシェアリング(営農型太陽光)や建築物への太陽光設置義務化など、再生可能エネルギー拡大に向けた抜本的な対策が不可欠であると政府に強く訴えている。

   安定したエネルギー自給のあり方について、今こそ根本から見直す時期に来ているのではないだろうか。

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