「自衛官募集事務のため、令和8年度に18歳、22歳になる方の氏名と住所の情報を、自衛隊に提供します」「個人情報の提供を望まない方は、除外申請の手続きを6月1日までに行ってください」福岡県福岡市広報戦略室のXが2026年4月1日に投稿したこの案内に、波紋が広がっている。情報提供を行うのは福岡市だけではないが、2日時点で20件超の苦情が寄せられたという。市は情報提供について、「法令に基づき協力を行うもの」と説明している。情報提供は福岡市だけではないが...Xに不安の声続々福岡市の公式サイトでは、自衛隊への情報提供の経緯や法的根拠を説明している。自衛隊は、衛官候補生の募集に関し、必要があるときには都道府県知事又は市町村長に必要資料の提供を求めることができることを定めた自衛隊法施行令第120条に基づき、自治体に情報提供を依頼。福岡市は、「自衛官の募集に必要な情報の提供は公益性がある」と判断し、個人情報保護審議会に諮問の上、「条例に基づく適正な手続きを経て実施」しているとしている。また、提供した情報については、「目的外利用の禁止や業務完了後は責任者立会いの下、シュレッダー処理で確実に廃棄を行い、報告書を提出すること等」を示した協定を結んでいるとした。なお、自衛官募集事務に係る自衛隊への情報提供は、「全国で1,100を超える市町村(政令指定都市では、20市のうち17市)」が行っているといい、福岡市だけのものではないようだ。しかし、福岡市のX投稿は、4月3日時点で1万2000件リポスト(拡散)され、注目を集めている。「希望する人のみが申請にすればいいじゃないの」「手続きしなければ自動的に、って・・」など、自ら申請をしなければ自衛隊に情報が提供されることへの不快感、不信感を示す声が多く寄せられた。福岡市「法令に基づき協力を行うもの」福岡市区政推進課は3日、自衛隊への情報提供について、J-CASTニュースに次のように説明した。「毎年、自衛隊から市町村長に対して、自衛隊法及び同法施行令に基づいて対象者情報の提供について依頼があります。それに対し、自衛隊への本人の同意を得ない対象者情報の提供は、個人情報保護法に基づいて実施しています」X上では大きな反響が寄せられたが、市役所にも4月2日時点で電話14件、メール7件、意見が寄せられたという。Xではこの情報提供に不安、不信感を覚えるような声が寄せられているが、このことについての見解を尋ねると、市区政推進課は、「自衛隊は被災地支援などの公益性の高い重要な任務も担っており、名簿を提供する目的は自衛官募集事務について、法令に基づき協力を行うものです。経緯や趣旨はホームページ等に詳細に掲載しております」と説明した。また、根拠となっている法令について、次の3つを示した。「自衛隊法第九十七条 都道府県知事及び市町村長は、政令で定めるところにより、自衛官及び自衛官候補生の募集に関する事務の一部を行う。」「自衛隊法施行令第百二十条 防衛大臣は、自衛官又は自衛官候補生の募集に関し必要があると認めるときは、都道府県知事又は市町村長に対し、必要な報告又は資料の提出を求めることができる。」「個人情報保護法第六十九条 行政機関の長等は、法令に基づく場合を除き、利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供してはならない。」自衛隊への情報提供をめぐっては裁判もなお、福岡市のXは、20年から毎年、同様の案内を投稿しているが、今回ほどの反響を集めたのは初めてだった。一方、自衛隊への情報提供をめぐっては、複数の裁判が行われている。3月26日には、「プライバシー権侵害」だとして、岐阜市の高校生が損害賠償を求め、国と市を提訴したことが報じられている。24年にも、奈良市の高校生が、自衛隊への情報提供は違憲だとして、国と市を提訴したと報じられている。
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