「君ね、なかなかいいよ。頑張りなさい」
もう一人の恩人は作家の三島由紀夫さんだ。21歳のころ、舞台「シラノ・ド・ベルジュラック」に挑んだ時のこと。舞台の経験が少なく、稽古中は落ち込んでいたという。ある日楽屋にいたら三島さんがたずねてきた。「スッと入ってこられて『今ね、稽古をずっと見ていた。君ね、なかなかいいよ。頑張りなさい』と言われ、急に明るくなって、明日からの稽古はがんばるぞとものすごい力をもらった」と話した。三島さんが亡くなる前年に書いた最後の戯曲、舞台「癩王のテラス」の主演に北大路さんが抜擢された。「最後のシーンで『精神は死んだ(中略)肉体こそ不死なのだ』というセリフ、逆説ですよね。その時に(右の手のひらを前に向けて右手を挙げるポーズ)これは必ずやってほしいと言われました」。翌年、地方公演の楽屋でテレビを見ていると、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地で演説している三島さんの姿を見た。その時、三島さんが最後にとったポーズを見た時に「爆発しそうになった」という。「(自分がやった癩王のテラスのポーズと)同じじゃないですか。ああ、もう想像もできないですけど、そういう時期に先生と出会うことができたというのは僕の運命としてしっかりと受け止めていきたいと思った。肉体と精神、心を大事にして可能な限り磨きあげなければいけない、大切にしなければいけないという思いをそれぞれの先人から教わってきた」と話した。
(ジャーナリスト 佐藤太郎)