西武鉄道の主要路線といえば、西武池袋線と西武新宿線である。西武池袋線は、池袋駅という大ターミナルを起点とし、飯能へ、列車によっては西武秩父へ向かう路線となっている。特急「ちちぶ」「むさし」にはデザインも美しく車内も快適な001系「Laview」が使用され、東京メトロ有楽町線や副都心線にも乗り入れる。いっぽう、西武新宿線は、西武新宿駅というこの路線のみのターミナルが起点である。近くには日本最大級のターミナル・新宿駅があるものの、少し離れている。他路線と接続するのは高田馬場駅であり、JR東日本の山手線や東京メトロ東西線からの乗客をこの駅が受け入れる。向かう先は本川越駅だが、所沢駅あたりではもう空いている。同一鉄道社内での「沿線格差」沿線の雰囲気としては、西武池袋線のほうがいろいろなものが充実していて明るく、西武新宿線はいまいちぱっとしないところがあり、同じ西武鉄道でも「沿線格差」があると指摘されている。西武ホールディングスの株主総会でも、池袋線沿線ではさまざまな施策が行われているのに対し、新宿線沿線の取り組みが遅れることを問題視する質問が出たことがある。通常、沿線格差は別々の事業者間で言われるものだが、西武鉄道では、同一の事業者内に不満が出るほどの差がある。それが路線のブランド力の差にも影響している。もちろん、西武鉄道もこの課題を自覚しており、さまざまな取り組みを進めている。西武新宿線を未来ある路線にするために西武鉄道は、西武新宿線を利便性が高い路線にし、住み心地のいい沿線にするためにさまざまな取り組みを行っている。その代表的なものが、新宿線連続立体交差事業の推進である。中井駅~野方駅間の地下化、東村山駅周辺の高架化が現在推進されており、井荻駅~西武柳沢駅間の連続立体交差事業も始まっている。また、野方駅~井荻駅間の立体交差計画も事業化を目指している。連続立体交差事業により踏切が除去されれば、交通渋滞や地域の分断が解消される。西武新宿駅は、新宿駅と距離がネックになっている。両駅を最短で結ぶ地下通路の整備が計画されており、JRや東京メトロとの乗り換え利便性が向上する見込みだ。鉄道のサービスでは、2018年3月に「拝島ライナー」を運行開始し、新たな着席サービスを開始した。本川越方面の特急「小江戸」は、2027年春に新型車両「トキイロ」に置き換えられ、ライナー列車に姿を変える。近距離の利用がしやすくなるとみられる。現在の「小江戸」は、高田馬場駅~東村山駅間が一部を除きノンストップで、近距離利用には向いていなかった。ライナー化でこの問題が解消される。一方で、2028年度からは「ニューレッドアロー」1編成をリニューアルし、観光特急として運行を開始する予定だ。都心へのアクセスのためには、西武新宿線を東京メトロ東西線に乗り入れさせようとする構想もある。この構想は西武新宿線の利便性を大いに高めるものになるだろう。まちづくりについても、所沢駅東口駅ビル計画を2020年9月に完了している。立体交差事業によって生み出された土地には商業施設なども設けられるだろう。このように西武グループは、新宿線沿線の価値向上に取り組んでいる。西武新宿線は今後、「伸びる」余地が十分にある路線だといえそうだ。
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