夜の店は驚くくらい盗難が多い。ローカル、都会、どこでもこの問題は必ず発生し、手癖の悪いキャストが必ず現れる始末。キャバクラのみならずホストクラブやコンカフェ、風俗店など全ジャンルに共通するトラブルだ。
素行が悪い人は片っ端から他人のモノに手を付け、タバコや充電器、ドレスを始めとした仕事道具からハイブランドのアクセサリーや財布と、とにかく限度を知らない。特に電子タバコやスマホの充電器は盗まれやすいアイテムの上位を争い、「借りパク」(借りたままパクること)は日常茶飯事とも言われている。
夜職を長くやっていると最低でも1回は被害に遭うくらいには、毎日のように盗難が起きている。なぜ、こうして手癖の悪いキャストが続々と現れるのか。
「元々やばい子」と「働くうちに闇に飲まれる子」
キャストの私物や店の備品を勝手に持ち出す手癖の悪い人は、1店舗に必ず1人はいるといっていいかもしれない。たいていは悪事がバレて退店させられるのがオチだが、体入(体験入店の略)という1日ポッキリの「お試し」と盗みをセットで働き、あちこちで店内を荒らす困ったさんも一定数いる。相当悪評が広まらない限り、「体入泥棒」を見抜くのは難しいため、本当にタチが悪い。
こういう手癖が悪いキャストは元から倫理観に問題があるか、働くうちに闇に飲まれるかの2種類に分けられる。
夜の世界はよくいえば優しく、悪くいうなら甘いため、経歴も資格も性格も関係ない。数字さえ持っていればある程度のことが許されて、性格が少しブッ飛んだ人に客が興味を示すなど、ある意味、完全なる社会外だ。常識が通用しない世界だからこそ、倫理観がズレた人が集まりやすいのかもしれない。そして、盗人も紛れやすいのかもしれない。
人のモノに手をつけるタイプは諸々の感覚が変わっているため、一般職に就くのが難しいケースも見られる。実際、昼職をしていたものの会社でも似たような悪事を働いてクビ→歓楽街へ足を踏み入れる話も稀にあるほどだ。
倫理観がおかしい時点で一般社会から遠ざかり、自由な夜の世界のルールを利用してマズイ方向へと走るのだと推測する。たまにロッカーがないなど防犯対策が甘いところも多く、意識がユルんだ店は最高の餌場と化す。筆者もローカルのキャバクラで働いていた際に財布から3000円を盗られ、後日も似たような金額の窃盗が発覚し、トラブルへ発展した経験がある。
思うように稼げないから!? 夜職のキラキラなんて一握り
キャストデビュー直後は至って普通だったのに、歓楽街の甘さに慣れ切って徐々に性格も価値観も変わってしまうなんて人も実は多い。
まぁ働くうちに人間性に変化が起きるのはよくあることだが、倫理観が捻じ曲がると盗みやイジメ、他者の蹴落としなどに走りやすい。常識を逸脱したナイトワーカーを見るうちに感覚がマヒし、「まぁこのくらいいいでしょ、どうせバレない」というナメた考えへ陥った結果が窃盗だ。
こういう後天的に手癖が悪くなったタイプは、ある意味、自身がナイトワーカーなのに夜職そのものを見下す行為ともいってもいいかもしれない。途中から考えが悪い方向に変わると軌道修正が難しく、簡単な言葉でいうところの「性格が悪い人」になってしまうためだいたい予後は悪い。
収入が少なくて好き勝手に買い物ができないから、盗みを働くケースもある。努力をすれば収入は青天井の商売なのだから「じゃあ仕事を頑張ればいいじゃない」という話で完結するのに......。
それでも、「自分には手が届かないから」と洋服やブランドバッグ、腕時計、アクセサリーをロッカールームや先輩の家からかっさらっていく例は決して少なくない。特にホストクラブの寮ではアクセサリー盗難事件などしょっちゅうで、思うように稼げないのを理由にして仲間を裏切ってしまうのだ。
だが、本人の頑張りが足りないのは大前提として、やはりそう簡単に稼げないのも事実である。たとえ高時給を提示されても利益が出せなければ速攻クビor干される対象になり、給料1000万円など夢のまた夢。憧れのブランドバッグが手に入ると思って歓楽街へ飛び込んだのに、現実は厳しい。夢と理想のギャップに打ちひしがれて、でも事実を受け入れられず窃盗へ走る地獄絵図も本当に存在する。
SNSで目にする輝きなんて、ピラミッドの頂点のみが見える風景だ。お金が稼げるという期待から現実に直面し、踏ん張れる層はそこまで多くない。だいたいが夢に破れて街を去るか、間違った根性を出して常識外の行動を取るかなので、理想を掲げ過ぎた「キラキラ」は時に人間を変えてしまう。
手癖が悪い子にも、いろいろ事情はあるだろう。しかし、どんなに生活が苦しくても、他人には分からない大きな夢を持っていても、ダメなものはダメなのだ。夜の世界はハッキリと注意してくれるオトナが少ないせいで、倫理観が一度でも欠ければジ・エンドに近づいてしまう。
歓楽街に足を踏み入れるのは「人間としてのズレ」と戦う覚悟も必要なので、どうか若い人々には表向きの輝きだけに釣られないでほしいと願う。
【プロフィール】
たかなし亜妖/2016年にセクシー女優デビュー、2018年半ばに引退しゲーム会社に転職。シナリオライターとして文章のイロハを学び、のちにフリーライターとして独立する。現在は業界の裏側や夜職の実態、漫画レビューなど幅広いジャンルのコラムを執筆中。