2026年5月23日16時から18時にかけて、「オタクによる反戦デモ」が国会議事堂前で行われた。同デモは3月28日にも実施されており、今回は2回目の開催となる。
前回同様、Xを中心とした参加の呼びかけに応えて国会前に詰めかけ、憲法改正に意欲を見せる高市早苗政権、さらにはパレスチナやイランへの攻撃を繰り返すイスラエルに対し、抗議の声を上げた。
「『お子様ランチの旗がどうか』とか...もう話にならない」
多くの参加者が見守る中、さまざまな登壇者によるスピーチが行われた。主催者の高橋裕行氏は「こんなにも『ものがない』とみんなが騒いでいる中、国会で何をやっているかと言うと、『お子様ランチの旗がどうか』とか言ってるわけじゃないですか。もう話にならないです」と発言。石油由来の原材料不足が叫ばれているにもかかわらず、「国旗損壊罪」の議論ばかりを進める政権を批判した。
『がんばってるのになぜ僕らは豊かになれないのか』(KADOKAWA)などを手掛けた漫画家の井上純一氏は、「デモなんて意味がない」といった冷ややかな声が多いことに触れ、「ケニアでは増税法案が止まりました。スリランカでは大統領が去りました。韓国では厳戒令に抗議する市民の声が大統領の罷免につながりました。全て10年以内の出来事です。人が集まり、同じ場所に立ち、同じ言葉を掲げる。そこから政治が動くんです」と話した。
クリエイティブディレクターの辻愛沙子氏は、多種多様なカルチャーが今日まで日本で発展してきた背景について、「この国の憲法が守り抜いてきた『戦争をしない国』という平和なアイデンティティがあったからこそだと私は思います」と語る。続けて、「この国が決して戦争に加担しない、平和で高潔な国であり続けていたからこそ、表現の自由が守られ、世界中の人々が安心して日本のカルチャーを愛してくれたのだと思います」と述べ、憲法改正に反対の姿勢を示した。
また、著名人だけではなく、一般参加者によるスピーチも実施。北海道から来たという女性は、「私には高い志も崇高な使命もありません。ただの一般人に過ぎません。その一般人が言います。戦争反対。改憲反対。戦争なんか絶対に許さない」と口にし、危機感を訴えていた。
参加者の思いを聞くと
参加者に話を聞いた。50代男性は、「2月の衆議院選挙ではほとんど明言していなかった政策を、選挙後にどんどん進める姿勢には違和感を覚えます。また、高市首相は会見をほとんど行わず、Xで一方的に報告するばかりです。そんな反論を許さないやり方も危険だなと」と語る。
10代の女子大生は、「これまで恥ずかしながら政治にはあまり関心がありませんでした。ただ、防衛装備移転の『5類型』による制限が撤廃され、武器輸出が可能になったことを知り、毎日危機感を募らせています」と口にした。
一方、デモ参加者は全員が全員、スピーチに耳を傾け、声を張り上げてコールをするわけではない。最近では、プラカードを脇に置き、レジャーシートに腰掛けるなど、緩やかに抗議をする参加者も目立つ。
安保関連法に反対するため、10年前にデモに参加していたという男性は、「10年前と雰囲気は変わりましたね」と口にし、「デモは民主主義の表現方法の1つなので、参加しやすくなったのは良い傾向だと思います」と語る。
実際、こういったスタイルが参加のハードルを下げているようで、シートにお菓子などを並べて座っていた30代女性は、「デモって過激な人が騒いでいるイメージでした。ただ、実際に参加してみると気軽に参加している人が多いことを知って、『いいな』と思っています」と話す。
また、女子高校生の一人は、「学校で政治の話をできる友達はいません。なので、『自分と同じように政治に危機感を持っている人がこんなにいるんだ』と思える」と笑顔を見せた。従来の「猛々しい」「騒がしい」「怖い」というイメージから、デモは変化しつつあるようだ。
「偉大な漫画家たちの思いが踏みにじられているような気持ちに」
「オタクによる反戦デモ」だからなのか、個性的な参加者も多い。動物と戦争をテーマにしたものなど、いろいろな戦争関連の書籍をシートの上に並べ、誰でも自由に立ち読みできる場を設けていた30代男性は、「『戦争の被害者は子どもや女性』といったことはよく言われますが、動物や植物も例外ではありません。そのことを知ってほしいと思いから始めました」と語る。
中東情勢の悪化により、一部商品のパッケージの白黒化を決めたカルビーの商品を並べ、デモ参加者に配布していた40代女性は、「カルビーに対して政権幹部が『売名行為』と発言したことが報じられたじゃないですか。それが本当に許せなくて。『カルビー頑張って』という気持ちで配布しています。同じような気持ちの人が立ち寄ってくれるので、すごく楽しいです」と声を弾ませる。
また、創作活動をしている人の姿も。趣味の水彩スケッチをしていた20代女性は、「SNSでピクニックしながら参加している人の存在を知り、『これなら参加しやすそうだな』と思って今回初めて足を運びました。せっかくなので、スケッチしながら参加しようかなと」と話す。
タブレットで漫画を制作していた20代女性は、「今まさに、戦後から戦前に変わるかもしれない状況にあります。私は小さい時、水木しげるさんや手塚治虫さんの作品から戦争の恐ろしさを学びました。偉大な漫画家たちの思いが踏みにじられているような気持ちになり、参加しました」と答えた。
(望月悠木)