積極財政派の筆頭格である高市早苗首相が、ことあるごとに訴えてきた消費減税。ここへきて、その議論が本格化している。市民の負担軽減につながると歓迎ムードかと思いきや、シンクタンクをはじめとする専門家からは、この減税政策に対して冷ややかな目が注がれている。それはなぜなのだろうか。恒久減税なら「投資」と割り切れるかもしれないが理由のひとつに、この減税にかかるコストが挙げられる。有力とされる「食料品は1%」案が実現した場合、全国津々浦々の商店のレジシステムを、食料品の消費税=1%に書き換える必要がある。法制化から実際のシステム対応を終えるまでには、早くとも半年から1年程度の期間を要すると推測されている。このシステム改修のコストは、誰が負担するのだろうか。これが恒久的な減税であれば、小売店も投資と割り切れるかもしれない。しかし、現在議論されているのはあくまで期間限定の措置である。期間が終了すれば、再び税率を元に戻すためのシステム改修が待っている。政府がこの改修費を全額補助するとは考えにくい。となれば、その改修コストは、事業者に我慢を強いるか、最終的に商品の本体価格に上乗せされる公算が大きい。生活を楽にするはずの減税が、結果的にかえってインフレを招くリスクをはらんでいるのである。本当に困っている層への支援が薄まるまた、消費減税は結果的に高所得層が優遇される一面を持つ。低所得者ほど、収入に占める食費の割合(エンゲル係数)は高いため、食料品の減税は生活を助ける効果があるように見える。だが、データやシミュレーションを用いて政策提言を行うチームみらいは、一律の消費税減税が高所得者ほど有利になるという、逆進性を持つことを指摘している。税率が一律で引き下げられれば、当然ながら購入金額が大きい高所得者のほうが、手元に残る減税額は大きくなるからだ。麻生政権時代の定額給付金や、コロナ禍の10万円一律給付などのいわゆる「バラマキ」と同様、本当に困っている層への支援としては効果が薄まってしまうという側面がある。妥協の産物である1%案が実現しても、結局は物価高にもともと高市首相と自民党は、衆議院選挙において、食料品に限り2年限定で「消費税ゼロ」の公約を掲げていた。だが、なぜそれが1%に傾きつつあるのか。仮に食料品の消費税を0%にしてしまうと、インボイス事業者の税務処理、特に「仕入税額控除」の計算が破綻する恐れがあるからだ。商品を仕入れる際の税と、販売する際の税の差額を計算する仕組みにおいて、片方を免税にしてしまうと、サプライチェーン全体のシステム改修が極めて複雑になってしまう。つまり、公約に縛られた高市首相ら政治家の思惑と、小売現場を完全に崩壊させないためのギリギリの妥協点が「1%」ということになる。とはいえ、その妥協の産物である1%案も、小売現場には莫大なレジ改修費と半年以上の時間を強いる。今年4月22日に行われた社会保障国民会議で発表されたように、農業・水産業の関係団体からも、改修コストの本体価格への転嫁と、実質的な効果が及ばない可能性が指摘されている。もし、政治家たちの政策実現のアピールのために、市民の生活が苦しくなるのだとしたら、あまりに非合理だと言わざるを得ない。6月4日の衆議院予算委員会で高市首相は「この夏に国民会議の結論が出たら、次の国会でできるだけ早く提出したい」と述べた。しかし、税率については「結論を先取りすることはしない」と言葉を濁したままである。
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