高市早苗首相の事務所が自民党総裁選や衆議選で誹謗中傷動画の拡散に加担したとされる疑惑を巡り、首相の言動が二転三転している。国会答弁を訂正する事態に追い込まれたが、それさえも過去の発言と矛盾することが掘り返されてしまった。
週刊文春・文春オンラインは、高市首相の陣営が他候補を中傷する動画の作成・拡散を依頼したとする疑惑を繰り返し報じてきた。高市首相は当初、秘書と動画作成者は「面識がない」と断言。文春側が2026年6月3日、秘書と動画作成者によるオンライン会議の音声を公開すると、高市首相は「(文春の)有料オンライン会員になろうとは思わない」と確認を拒否する姿勢を見せた。さらに6月5日には「秘書本人かどうか、あのような音声を元に判断することは難しい」とも述べた。
数日で「事実と違う」主張を翻す
さらに同日、動画作成者と秘書のオンライン会議について報じた週刊現代の記事内容にも「事実と違うと(秘書が)申しておりました」と答弁し、面識がなかったことを改めて強調した。この動画作成者は、金融庁の調査対象となっている暗号資産「サナエトークン」の開発に携わっており、高市首相の事務所が暗号資産の問題にも関与していた場合、事態はさらに深刻化する可能性がある。
ところが、強気の姿勢は数日で一転する。この「事実と違う」という部分について高市首相は6月10日、改めて秘書に確認した上で「その点は訂正します」と述べ、説明を撤回する形となった。秘書と動作作成者に「面識がなかった」とする説明の信ぴょう性が、ますます揺らいでいる。
立憲民主党の斎藤嘉隆国対委員長は6月11日、高市首相の態度について「虚偽の答弁だと言われても仕方ない」と批判。6月14日に放送された「サンデーモーニング」(TBS系)でも、法学者の谷口真由美氏が「国会でこんなこといつまでやってるんだ、みたいな批判があるんですが、国会こそ憲法で定められている国政調査権の場」と指摘。「問われなきゃいけないのは、SNS時代の選挙のあり方。選ばれた人たちの正当性が問われている」と述べ、国会で徹底的に真相究明することを求めた。
掘り返され続ける黒歴史コラム
二転三転する説明に対し、SNS上では高市首相が過去に発信していた政治信条との矛盾、いわゆる「ブーメラン」を指摘する声が相次いでいる。特に批判の的となっているのが、2月に消費減税への悲願が「真っ赤な嘘」と指摘され、直後に「全削除」の騒動があったことで知られる公式サイトのコラムだ。
高市首相は自民党が下野していた11年8月、公式サイトのコラムで「総理や閣僚が国会で行った答弁は、しっかりと議事録に残され、以後の政府の行動を拘束することになります」と、当時の民主党政権を批判。「知識不足で間違った内容の答弁をされては最悪です」と記していた。デジタルアーカイブに残るこの記述が発見されると、SNSでは「特大ブーメラン」「言うこととやることがまったく違う首相の言葉なんて何一つ信じられない」「最大の敵は過去の自分」などの批判が続々と上がる結果となった。
それだけではない。02年1月のコラムでは、秘書への管理責任について言及。「何か問題が起きた時に『秘書が勝手にやったこと。私は知りませんでした』とだけは言いたくない」と記している。現在の高市首相の対応は、秘書から聞き取り不足を理由に答弁を二転三転させており、電話をした際に「(秘書から)キレられました」とも説明していた。管理監督能力に疑念を抱かせる内容で、やはりコラムの主張と矛盾する。
そもそも高市首相は21年9月の自民党総裁選の際、自身のX(旧Twitter)に「他候補への誹謗中傷や恫喝や脅迫によって確保される高市支持など私は要りません」と投稿していた。文春が報じた誹謗中傷動画の疑惑が事実であれば、この投稿と完全に相反することになる。
衆院選で大勝した要因について「高市首相は他党を決して批判しなかった」とする見方もあった。だが、この誹謗中傷動画の疑惑で、そのイメージが根底から崩れ始めている。現在、首相はフランスで開かれる主要7か国首脳会議(G7サミット)のために欧州を訪問しているが、帰国した後もこの問題はしばらく長引きそうだ。