本人の努力と評価、対話の不足
1つ目は、努力と評価の不一致です。
新しい提案をしても採用されない。改善活動を行っても評価されない。成果を出しても報酬や役割に反映されない。こうした経験を重ねると、人は次第に挑戦しなくなります。
心理学では「学習性無力感」と呼ばれる状態があります。何をしても状況が変わらないと感じると、人は行動そのものをやめてしまうのです。静かな退職の背景にも、これと似た構造が存在しています。
2つ目は、対話の不足です。
近年、多くの企業がエンゲージメント調査を実施しています。しかし、調査結果を集計して終わりになっている企業も少なくありません。社員が求めているのはアンケートではなく、自分の意見が聞かれ、受け止められ、何らかの変化につながる実感です。
特に若い世代ほど、その傾向は強くなっています。以前であれば、「会社の方針だから」で納得できたことも、現在はそうはいきません。
なぜその仕事を行うのか。なぜその目標を目指すのか。自分はどのような成長機会を得られるのか。
こうした問いに対して説明できる組織でなければ、人材の心は離れていきます。そして最も注意すべきなのは、静かな退職は数字に現れにくいという点です。離職率には表れません。欠勤率にも表れません。しかし、組織の活力は確実に失われていきます。
会議で発言が減る。改善提案が出なくなる。新規事業への立候補者がいなくなる。顧客への提案が受け身になる。
こうした小さな変化が積み重なり、企業の競争力を静かに蝕んでいくのです。
経営者や管理職が本当に警戒すべきなのは、退職者ではありません。何も言わなくなった社員です。不満を口にする社員は、まだ会社に期待しています。本当に危険なのは、期待することをやめてしまった社員です。
では、どうすればよいのでしょうか。