国旗を損壊する行為を処罰対象とする国旗損壊罪法案が、2026年7月16日の参院内閣委員会で可決された。採決に先立って行われた議論では、法案提出者である日本維新の会の阿部圭史衆院議員が、法案成立で「愛国心も醸成されていく」とした自身の発言を撤回するかどうかが争点になった。立憲民主党の杉尾秀哉参院議員は、「撤回するのか、しないのか」と繰り返し質問したが、阿部氏は「提案者としての説明と政治家としての個人的な信条の区別が分かりにくかったのであれば遺憾」と繰り返すにとどめ、杉尾氏は「いい加減な人たちが出してきている法案」と非難した。「愛国心」発言は憲法が保障する内心の自由を侵害するおそれ問題になっているのは6月26日の衆院内閣委員会での発言で、阿部氏は、「本法案の成立を契機に、国民が自国についての既属意識、一体感等を抱くことにより、国民の気持ちの上での結合・統合の役割を果たすという国旗の意義がますます向上し今後一層、国旗を大切にするという気持ちが情勢されていく。愛国心、国を愛する心も醸成されていくのではないか」などと発言。野党側は、発言は憲法が保障する内心の自由を侵害するおそれがあるとして、撤回を求めている。委員会でのやり取りは次の通り。杉尾秀哉参院議員: 法案提出者であります日本維新の会の阿部議員に、この「愛国心発言」について。この発言は極めて問題があります。撤回するんですか、しないんですか、どちらですか?阿部圭史衆院議員(維新): 6月26日の衆院内閣委員会では、「政治家としてご答弁いただければ」というご質問をいただきましたので、私自身の政治信条に関する答弁をしたところでございまして、国民が自国についての帰属意識、一体感等を抱くことにより国民の気持ちの上での結合、統合の役割を果たすという国旗の意義がますます向上し、今後一層、国旗を大切にするという気持ちが醸成されていく、そして愛国心、国を愛する心も醸成されていくのではないかと考えております。私の政治家としての発言について、誤解のないように改めて申し上げますと、私自身、愛国心、自国に対する自信や誇りというものは、刑罰等によって強制されるべきものではなく、自然に醸成されていくべきものであると考えております。また国旗についての受け止めは、最終的には個々人の内心に関わる事項であると考えてございまして、国旗を大切にするという気持ちが醸成されていく、そして、愛国心、国を愛する心も醸成されていくのではないかという衆院内閣委員会での私の答弁は、できるだけ多くの国民の皆様に、国旗についての理解を深め、国旗を大切に取り扱うよう努めていただきたい、自国の歴史や文化について正しい知識を持ち、自国に自信と誇りを持つのは大切なことであり、そういった意味での愛国心が自ずと育まれるような環境が実現されることが望ましいという趣旨でございまして、個人の内心に立ち入って特定の思想、良心や行動を強いるという趣旨のものではございません。提案者としての説明と、政治家としての個人的な信条の区別が分かりにくかったのであれば、遺憾でございます。「ちょっと質問に答えて!委員長!」杉尾議員: 聞いたのは、「撤回するか、しないか、どちらですか」と聞きました。それだけ答えてください。阿部議員: 提案者としての説明と、政治家としての個人的な信条の区別が分かりにくかったのであれば、遺憾でございます。提案者として改めて申し上げますと、本法案は、あくまでも国旗の損壊等として外形的に現れた客観的な行為の処罰の対象とするものでございます。杉尾議員: ちょっと質問に答えて!委員長!阿部議員: 個人の内心に立ち入って、その行為の基礎となった思想や信条を処罰するものではございませんし、その思想や信条に反する特定の行動を強いるものではございません。杉尾議員: もう一回聞きますよ。発議者として「撤回するのか、しないのか」、それだけ答えてください。阿部議員: 改めて申し上げます。提案者としての説明と、政治家としての個人的な信条の区別が分かりにくかったのであれば、遺憾でございます。杉尾議員: そういう回答をされるんだったら、この法案、もう先に進められませんよ。そういう、いい加減な人たちが出してきている法案だと、みなさざるを得ない。「個人の意見」と言いますけれど、法案の核心なんですよ。質疑、簡単におさらいしますよ。質問したのは維新の西田薫議員です。大阪府の小学校で、卒業式の国歌斉唱の際、多くの小学生が起立しなかったというエピソードを紹介した。これは戦後の「自虐史観による偏向教育が原因だった」、これに対して「国旗の常時掲揚の条例制定に取り組んだ結果、教育の正常化が進んだ」と、自慢げに言っているんです。今回も「この法案を成立させることで、子どもたちに愛国の思いを教える契機になるのではないか」。先ほど伊勢崎(賢治)議員が、この子どもの話をしました。まさにそうです。子どもに愛国心を強要することになるのではないか、実質的に。つまり、「政治家として」と断りながらも、本法案が愛国心の醸成という個人の内心に影響を及ぼすことを期待しているということを、図らずも先ほどおっしゃいました。「期待している」という風におっしゃいましたよね。これでもこの法案が、個人の内心と関係ないと、どうして言えるんですか?維新創業者の橋下徹氏も法案に反対阿部議員: 西田議員からのご質問に、「政治家としてのご答弁を」ということでお答えをしたものでございますので、あくまで提案者としての説明と、政治家としての個人的な信条の区別について申し上げたものでございまして、改めて申し上げますが、本法案につきましては、その区別で申し上げたということでございます。杉尾議員: 皆さんの創業者の維新の橋下徹さんは、法案に反対の立場を表明した上で、「愛国心の醸成を言ったらおしまいだ」と、こういう風に言っているんです。「思想的には、これでは中国と全く同じじゃないか」と言っているんですよ。皆さん、中国を批判されていますよね?やろうとしていることはそれと同じじゃないかと橋下さんはおっしゃっているんです。あなた方がしようとしていることは、国旗への尊崇の念を通じて国民に愛国心を持たせる、それを刑罰をもって実現させようとしていることに他ならないんです。いかがですか?阿部議員: 提案者としては、本法案はあくまでも国旗の損壊等として外形に現れた客観的な行為を処罰の対象とするものでございまして、個人の内心に立ち入って、その行為の基礎となった思想や信条を処罰するものではございませんし、その思想や信条に反する特定の行為、行動を強いるものではございません。杉尾議員: こういう不誠実な答弁を繰り返すんだったら、採決に応じられませんからね。それだけは、筆頭理事として言っておきますから。
記事に戻る