「身近な存在」と錯覚してしまい...
推しは基本的に遠い世界の人間だが、規模が大きかろうと小さかろうと、現場に通い詰めるうちに一部のファンは感覚がおかしくなることもある。撮影会などの接触イベントが頻繁に開催され、時にDMのやり取りもできてしまうと、一気に「身近な存在」と錯覚し始めるのだ。
「距離感バグ」を起こすと演者への接し方が「神」から「憧れだけど、ちょっと身近なお兄さん・お姉さん」へと変化。最終的に気持ちがいき過ぎたところまでいくと相手の素性まで暴きたくなり、ファンとしての危険ゾーンへと足を踏み入れてしまう。
生活ぶりから恋人の有無、交友関係等、何もかもを把握したくなる人はどの界隈にも現れる。「自分には絶対あり得ない」と思っていたはずだとしても、一度感覚が麻痺すればストーカー予備軍と化してしまう。
心のどこかでは禁則事項という事実に気づいていても、恋心は止められないのが難しいところ。暴走した末に、大問題へ発展する事例もある。演者と裏でつながり、正式な恋人ではなく金銭絡みや友達以上恋人未満などの微妙な間柄を築いてしまうと、高確率でトラブルへ発展する。そうした痛ましい事件も起きてしまった。
ファンと金銭目的でつながり、不義理をはたらく演者はいつの時代にも一定数いる。客は推しが好きだから、話を持ち掛けられたら大半がヒョコッと乗ってしまうだろう。しかし、軽率な行動が災いを呼ぶため演者はもちろんのこと、推す側の線引きも必要不可欠。どうか、大好きだったはずの趣味から転落し、人生で後悔することがないよう誰もが気を付けたいものだ。
お熱になっていると人は真っすぐに物事を見られず、他者の意見も耳に入れなくなる。恋とはそういうものなのだが、推し活の恋とは高確率で「真っすぐな純愛」ではなく、実る確率はあまり高くない。たとえ「ガチ恋」でなかったとしても、この中で一番のファンになりたいとか、誰かの競争で自分の価値を見出してしまうとお金を遣い過ぎてしまいがちだ。
イベント現場には驚くべきレベルのお金持ちや、公演を全制覇する「全通勢」もいて、上を見ればキリがない。推し活はどこまでいっても娯楽。「それしかない」と推しだけに依存しきると、経済的破綻を起こしやすいので、何事も楽しくほどほどに。
【プロフィール】
たかなし亜妖/2016年にセクシー女優デビュー、2018年半ばに引退しゲーム会社に転職。シナリオライターとして文章のイロハを学び、のちにフリーライターとして独立する。現在は業界の裏側や夜職の実態、漫画レビューなど幅広いジャンルのコラムを執筆中。